研究実績の概要 |
本年度は、昨年度までに作成したシンクロトロン光処理ダイズ(100Gy照射群、200Gy照射群、100Gy+アルミニウムフィルター照射群および100Gy+銅フィルター照射群)のM3個体について、これらの処理がゲノム中にどの程度の欠失変異(InDel)を生じるのか評価を試みた。昨年度の予備実験の結果より、次世代シークエンサーを用いたゲノム塩基配列解析の際に約20倍深度のシークエンスデータでは、変異箇所の特定が困難であったことから、100倍深度にまでデータ量を増やし、それぞれの処理区で2個体づつ反復してデータの採取を行った。その後、それぞれの個体に特異的なInDelのみを抽出したところ、100Gy処理区では平均5,002箇所/個体、200Gy処理区では平均4,626箇所/個体、100Gy+アルミニウムフィルター処理区では平均5,328箇所/個体、100Gy+銅フィルター処理区では平均4,815箇所/個体の変異が見出された。しかしながら、各処理区の間に極端な違いは認められず、この条件の範囲であれば、照射方法や線量の違いはInDelの数に大きな影響を与えていないことが示唆された。さらに、この変異頻度は、以前に我々がEMS処理によって作成したダイズ(品種:エンレイ)の解析で明らかにした塩基置換変異の頻度と比較すると40%以下であった。しかしながら、今回検出されたInDelのうちどの程度のものが真の変異であるかを確認するためには、個別の変異部位について検出用のプライマーを用いた検証が必要であると考えられる。
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