研究課題/領域番号 |
17K07620
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鮫島 啓彰 神戸大学, 農学研究科, 学術研究員 (50580073)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コムギ / ストライガ / 抵抗性 / アフリカ / 環境適応性 |
研究実績の概要 |
コムギ22品種を用いたポット栽培試験において、同作物のStriga hermonthica抵抗性に関する品種間差を調査した。4反復で行った試験において、コムギ一個体あたりのS. hermonthica寄生数が平均で5.0以上となった5品種がS. hermonthica抵抗性が低いと示唆された。一方、S. hermonthicaに全く寄生されなかったコムギ9品種は、S. hermonthica抵抗性が高い品種であると考えられた。コムギのS. hermonthica抵抗性には広い品種間差が存在する知見が得られたと言える。したがって、S. hermonthica汚染地域において、対策をとることなしにコムギ栽培を行うことは、被害発生の危険があると示唆された。 本試験ではS. hermonthicaの出現開始が播種後90日以降となる例が多数観察された。ソルガムを用いた試験では出現開始が播種後40日程度であることが多い。ソルガムと比較してコムギは低い気温で栽培されるため、低温がS. hermonthicaの生育に影響を及ぼしたと考えらる。一般的に、S. hermonthica出現時期が遅くなるほど、宿主作物の生育や収量への影響は少なくなると言われている。今後は、S. hermonthicaの寄生がコムギの生育や収量に及ぼす影響を定量的に把握する必要がある。 本試験でS. hermonthicaにまったく寄生を受けなかったコムギ品種の中に、スーダンで栽培されているコムギ品種であるPohenとNillemが含まれていた。この2品種を、現地環境への適応性とS. hermonthica抵抗性を併せ持つコムギ品種の候補とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抵抗性メカニズムを調査するためのin vitroでの試験が、機材故障のため、遂行できなかった。機材の修理は終了したため、来年度以降に予定していた実験を行う予定ある。
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今後の研究の推進方策 |
日本のコムギコアコレクション96品種を水耕栽培し、宿主根からの分泌物を含む水耕液をS. hermonthica種子に与えることで各コムギ品種のS. hermonthica種子発芽刺激活性を評価する。発芽誘導活性が低いものを、接触前抵抗性が高いコムギ品種として選抜する。また、コムギ品種の根乾物重を測定し、発芽誘導活性に対する根重の影響も評価する。 さらに、合成種子発芽刺激物質GR24で発芽させたS. hermonthicaをライゾトロン内で栽培したコムギ品種の根系に接種し、宿主根と接触後のS. hermonthicaの生育を顕微鏡で観察する。S. hermonthicaが宿主根に侵入できない場合、S. hermonthicaが宿主根に侵入するが茎葉部の伸長が見られない場合、伸長を開始したS. hermonthicaの茎葉部が枯死する場合、S. hermonthicaが順調に生育する場合を区分し、どこでS. hermonthicaの生育が止まったのかを基に各コムギ品種の接触後抵抗性メカニズムの評価を行う。 スーダンの圃場において現地コムギ品種を用いて、ストライガ抵抗性およびストライガ寄生がコムギの生育・収量に及ぼす影響を評価する。また、ポット試験において、土壌中のストライガ種子密度が高い条件でも安定した抵抗性を示すコムギ品種の選抜を目指す。選抜したコムギ品種は、上述の手法を用いて接触前および接触後抵抗性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
照明付インキュベータの故障により、予定していた接触前抵抗性の評価が行えなかった。照明付インキュベータの故障は既に終了しており、行えなかった評価については次年度に実行する。
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