研究課題/領域番号 |
17K07624
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
豊田 正範 香川大学, 農学部, 教授 (30284350)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水稲 / 点滴かんがい / 温室効果ガス / メタン / ヒ素 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,①メタン排出量削減効果試験:水稲を水田で通常の湛水栽培を行う場合と水田および畑地圃場で点滴かんがい栽培を行う場合のメタン発生量を比較し,点滴かんがいによるメタン排出量削減効果を明らかにすること,および②玄米ヒ素含有量低減効果試験:網室内試験水田で人為的にヒ素汚染土壌を作成し,水稲を湛水状態および点滴かんがいによる酸化的状態で栽培し,収穫した玄米中のヒ素含有量を測定して点滴かんがいによるヒ素含有量低減効果を明らかにすること,の2点を実施する計画であった. ①メタン排出量削減効果試験については,香川大学農学部附属農場の水田10aを波板で2分割し,水稲2品種(おいでまい,ヒノヒカリ)を通常の湛水栽培と畑地状態の点滴かんがい栽培を行う試験を実施し,生育および収量,かん水量,土壌の酸化還元電位おおび土壌水分のデータを得たが,メタンガスの排出量は測定できなかった.②玄米ヒ素含有量低減効果試験については,試験の実施を予定していた網室内試験水田の底面コンクリートのひび割れによる漏水があったため, 1/2000ワグナーポットによるポット試験に変更した.10ppmのヒ素汚染土壌に水稲を湛水状態および点滴かんがいによる酸化的状態で栽培し,生育,収量と収穫した玄米中のヒ素含有量を調査した.湛水区はヒ素を混入していない土壌とヒ素汚染土壌を常時湛水し,点滴区はヒ素汚染土壌を用いてかん水量の多・中・少の3段階に設定した.水稲の生育と収量は,湛水区同士の比較では非汚染土壌よりもヒ素汚染土壌が低く,点滴区はかん水量が少なかったために生育,収量ともに湛水区よりも低かった.玄米ヒ素濃度は湛水区のヒ素汚染土壌が全処理区の中で最も高く,非汚染土壌の湛水区でもヒ素が検出されたが,点滴区ではごく微量かあるいは検出されない濃度であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①メタン排出量削減効果試験でメタンガスの測定結果が得られなかった理由は,メタンガス収集チャンバーの設計と製作の遅れによりガスのサンプリングが1回に制限されたこと,さらに採取方法とサンプル瓶の扱いに人為的ミスがあったためである. ②玄米ヒ素含有量低減効果試験については,試験の実施を予定していた網室内試験水田の底面コンクリートのひび割れによる漏水があったため,1/2000ワグナーポットによるポット試験に変更した.生育,収量および玄米ヒ素含有量の結果は得られたが,3段階に設定した点滴区のかん水量がいずれも少なすぎたために,生育や収量が湛水区よりも大幅に低下した.このため,点滴かんがいによる玄米ヒ素濃度の低減効果については結果が得られたが,水稲の生育と収量を湛水区と比較しうるレベルが得られるよう点滴かんがいのかん水量を設定して試験を行う必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は平成29年度に実施した試験方法と結果を検討し,必要に応じて改善・改良したうえで,基本的には29年度と同じ内容の試験を実施する予定である. ①メタン排出量削減効果試験については,昨年,附属農場で実施した試験と同じ試験を実施する.水田10aを波板で2分割し,水稲2品種(おいでまい,ヒノヒカリ)を通常の湛水栽培と畑地状態の点滴かんがい栽培を行う試験を実施し,生育および収量,かん水量,土壌の酸化還元電位おおび土壌水分の調査とメタンガスの排出量を測定する.メタンガスの採取と分析手法は確立しているので水稲の移植後からできる限り毎週の採取を目標とする. ②玄米ヒ素含有量低減効果試験に関しては,漏水の可能性がある網室内試験水田では余剰なかんがい水が地下浸透しない範囲にかん水量を設定して点滴かんがいによる試験を実施する.なお,水漏れのしない大型のコンテナ等を網室内水田に埋設して湛水栽培の対照区とする.かん水量,土壌水分,生育等の基礎データと収穫後に玄米ヒ素濃度の測定を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
既存のガスクロマトグラフィーが使用できることになったので購入せずに済んだことと,土壌水分計の仕様を変更するなどして設備備品費を予定より減額することができたために次年度使用額が生じた.これらはヒ素分析の前処理に必要な消耗品,メタンガス捕集チャンバーの修繕と改良,動物の食害により故障した土壌水分センサーや土壌Ehセンサーの追加購入等で使用する予定である.
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