研究課題/領域番号 |
17K07624
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
豊田 正範 香川大学, 農学部, 教授 (30284350)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水稲 / ヒ素 / 点滴かんがい / 温室効果ガス / メタン / 亜酸化窒素 |
研究実績の概要 |
①メタン排出量削減効果試験:香川大学農学部附属農場の湛水した水田に,ヒノヒカリを機械移植した.除草剤を効かせるため湛水を1週間維持した後,あぜ板で2区画に分割した.一方は湛水区として収穫1週間前までできるだけ湛水状態を維持した.もう一方は点滴区として,排水し点滴チューブを設置して点滴区とした.ガスは週に1回,両処理区3箇所ずつ,イネ2株をカバーするよう設置した透明チャンバーから10分間隔で5回,真空バイアルに採取し,後日ガスクロマトグラフィーでメタンガスと亜酸化窒素ガスの濃度を分析した.湛水区では移植後に多量のメタンガスが排出されたが,7月末から急激に下がり,8月上旬以降はほとんど排出されなくなった.一方,点滴区では湛水時を除いてほとんど排出されなかった.最終的な積算排出量は,湛水区で250g/m2,点滴区で30g/m2であり,畑地での点滴潅がい栽培下でのメタンガスの排出量は水田に比べて88%抑制されていた. ②玄米ヒ素含有量低減効果試験:香川大学農学部の網室内試験水田(約5.8m×2.2m)を3区画用いて,それぞれの区画で湛水栽培と点滴潅がい栽培を行った.湛水栽培は86×66×深さ34cmのタライに土壌を入れて湛水状態とした.20ppmヒ素汚染土壌を作成し,各区画の各栽培区でヒ素処理区と対照区をそれぞれ設けた.点滴潅がい処理として1日1回(1:1区),1日2回 (1:2区),2日に1回 (2:1区)を設定した.土壌水分は1:2区で上下幅が小さい高頻度の,2:1区では上下幅が大きい低頻度の上下を繰り返し,計画どおり潅水が制御されたことを確認した.玄米中のヒ素含有量は湛水区,点滴区ともヒ素処理区で有意に高く,湛水区の対照区よりも点滴区のヒ素処理区の方がヒ素含有量は少なかった.点滴潅がいによる畑地での水稲栽培が玄米中のヒ素含有量を低減することを明らかとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①メタン排出量削減効果試験では,ガスの採取を真空バイアルとシリンジを用いる方法に改良したことでメタンガスを正しく測定することができた. ②玄米ヒ素含有量低減効果試験については,香川大学農学部に水素化物発生装置付属の原子吸光分光光度計が導入されたことにより多数のサンプルを自由に測定できる環境が整ったことが試験の遂行に大いに役だった.
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今後の研究の推進方策 |
①メタン排出量削減効果試験については,昨年,附属農場で実施した試験と同じ試験を実施し,2年分のデータを用いて論文を作成する.その他に農学部内の試験水田と畑地圃場でも湛水栽培と畑地状態の点滴かんがい栽培を行う試験を追加して実施し,それぞれでメタンと亜酸化窒素ガスを栽培期間全体を通じて測定する.これにより点滴かんがいを用いることで削減される水田から発生するメタンと,逆に畑地での点滴かんがい下で発生する亜酸化窒素の排出の実体を総合して温室効果ガス削減への効果を考察する. ②玄米ヒ素含有量低減効果試験に関しては,昨年度と同様に栽培試験を実施する.昨年度は施肥の遅れと病害により点滴区の生育、収量が湛水区より低下したため,両区の生育が同水準となるように施肥や病害により注意しながら試験を実施する.また,成分分析はヒ素に加えてカドミウムについても,また玄米だけでなく土壌についても実施し,土壌の酸化・還元とヒ素・カドミウム含有量との関係を総合して考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019 年度も圃場および網室内試験圃場にて再試験・追試験を実施するので,主にその消耗品として使用する.
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