研究課題/領域番号 |
17K07625
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
荒木 卓哉 愛媛大学, 社会連携推進機構, 准教授 (10363326)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ハダカムギ / 硝子率 / 後期重点施肥 / 15N / 13C |
研究実績の概要 |
研究初年度は1.13Cおよび15Nのダブルトレーサーによる植物個体内の動態の同時測定法の構築,2.1穂内の子実着生位置による子実乾物重および窒素含有率の経時的変化,ならびに硝子率の垂直分布の解析,および3.適期外播種(晩播き)における低硝子率高位安定生産に向けた穂肥施用量の検討について取り組んだ.1.は15Nは中間追肥および穂肥の効果を検討するために処理し,13Cは出穂後の止葉で同化された光合成産物の個体内の分配を検討するために出穂直後および出穂2週間後に止葉へ施用した.施用後の15Nの動態および13Cの大まかな分配特性を明らかにできたことから,処理から解析までの一連の技術を構築できた.2.について,出穂後以降7日間隔で穂を採取し子実着生位置別に子実乾物重および窒素含有率を測定した.その結果,子実の乾物増加は,着生位置に関わらず出穂後7日目から21日目に最も旺盛であり,出穂後35日目以降において乾物増加は認められなかった.子実着生位置では,穂内で12層を構成する子実の中で,5~8層の中間付近で乾物重は最も高い値を示した.また,窒素含有率は上位3層および下位2層でやや低い値となったが,層別による大きな差は認められなかった.3.について適期外播種(晩播き)では適期播種と比べて,慣行施肥条件では収量は15%低くなった.また,後期重点施肥として穂肥重点施肥と行った場合は適期外播種において適期播種よりも7%減であった.後期重点施用により減収程度は緩和された.また,硝子率は適期外播種において低くなった.したがって,適期外播種においては後期重点施肥による収量改善の可能性が考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の計画を実施し,次年度に新たな知見と次年度への課題を明確にできたため.
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目は,初年度において実施した適期外播種(晩播き)における低硝子率高位安定生産に向けた穂肥施用法の検討を引き続き行う.これは,圃場試験であり年次変化の影響も含めて解析を行う必要があるためである.また,この試験を行う際に,初年度で構築し13Cおよび15Nのダブルトレーサーにより窒素施用の効果および13C同化産物の分解に基づいた窒素分施法の高度化の知見を得る.また,硝子率粒発生に関わるタンパク質の同定ならびにその子実内への蓄積動態の生理学的および形態学的解析を行う.さらに,硝子率評価法について,硝子質粒の割合とその変異の両方を反映させた評価法を提案し,従来の評価法との違い,搗精時間および搗精の均一性について解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じたのは,13Cおよび15Nのダブルトレーサーに関する試験において,準備できた植物個体数が当初計画していた個体数よりも少なくなったため,処理および分析に用いる分析試薬の必要量が少なくなったためである. 次年度においては,ダブルトレーサーによる解析試験に利用したい.
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