研究実績の概要 |
ハダカムギの品質における課題は,硝子質粒発生のメカニズムが明らかにされていないことおよび硝子率の評価法である.本研究では,適期に播種できなかった場合(晩播)に発生しやすい硝子質粒を1穂内の子実着生位置に着目して,出穂後の子実成長,窒素およびタンパク質吸収特性について生理生態学的手法により解析し,硝子質粒発生のメカニズムおよび子実着生位置による発生の傾向について検討した.一穂当たりの子実乾物重は,マンネンボシにおいてハルヒメボシおよび四国裸132号と比べて有意に小さくなった.また,播種時期および穂肥窒素処理による差は認められなかった.着生位置別ではすべての品種で4番目から8番目までの子実乾物重が大きく,上位になるに伴い小さくなった.硝子率は品種間において有意な差異は認められなかった.また,播種時期では晩播区において早播区および標播区よりも有意に低くなった.穂肥窒素処理による硝子率の差異は認められなかった.硝子率は出穂期以降の気象条件を説明変数として重回帰分析を行った結果,重回帰式y = 7.29 x1 + 1.64 x2 ‐0.96 x3 - 0.25 x4 + 65.1を得られた(y;硝子率,x1;登熟期間,x2;平均気温,x3;積算降水量,x4;積算日射量).説明変数の偏回帰係数は登熟期間および積算降水量においてそれぞれ5%および1%水準で有意であった.すなわち,登熟期間が短いほど,また,登熟期間の降水量が多いほど硝子率を低くすることが推察された.子実着生位置ごとの硝子率は,播種時期において変異に差が認められ,早播区>標播区>晩播区の順となった.ハルヒメボシおよび四国裸132号では播種時期により硝子率が高い着生位置が異なり,標準区において5番目から8番目で,晩播区において10番目から12番目であった.
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