• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

イネ良登熟型遺伝子の準同質遺伝子系統および新規超極穂重型系統を用いた機能検証

研究課題

研究課題/領域番号 17K07627
研究機関近畿大学

研究代表者

加藤 恒雄  近畿大学, 生物理工学部, 研究員 (70149748)

研究分担者 青木 直大  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (70466811)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードイネ / 極穂重型系統 / 登熟程度 / 酵素活性 / 定量RT-PCR / ウェスタンブロット / 収量 / 成長解析
研究実績の概要

2017年度の実験において確立した,イネ極穂重型品種の登熟関連遺伝子座APS2, APL2およびSUT1上に品種密陽23号由来良登熟型アレル(アレル2)とアケノホシ由来非良登熟型アレル(アレル1)の期待される8通りすべての遺伝子型をもつホモ系統(すなわち準同質遺伝子系統,NIL-Aとする)および,これとは異なる共通の遺伝的背景をもつ同様のNILs(NIL-Bとする)を,2018年度において,これらとその両親品種を圃場栽培した.NIL-Aの各系統から出穂後10日目および15日目の2次枝梗上穎花を採取した.これらを基に, 発育胚乳中のAGPase活性,上記3遺伝子座に関する遺伝子発現,およびタンパク質発現を定量した.あわせて,NIL-AおよびNIL-Bの各8系統について登熟程度を調査した.
その結果,登熟程度に関しては,NIL-Aの方がNIL-Bに比べて高い傾向が見られた.NIL-Aにおいては,3遺伝子座上のアレルの違いは登熟程度に有意差をもたらさなかった.また,上記発育埴生中生理活性に関するいずれの結果も登熟程度の結果と対応していなかった.一方,登熟程度が低いレベルであったNIL-Bにおいては,APL2座上のアレル2をもつものはアレル1をもつものに比べて2次枝梗上穎花の登熟程度が有意に高くなることが判った.しかし,本NIL-Bについては酵素活性等の測定を本年度は行っていない.
上記登熟関連3遺伝子座の全てにおいてアレル2をもつ超極穂重型品種(仮称)ツブマサリの収量や登熟特性を, 2017年度同様検証した.その結果,ツブマサリは2017年度と同様,他品種に比べ穎花数/穂は飛躍的に増大したが,登熟歩合が低く特に多収とは言えなかった.2018年度には,ツブマサリに関する最終窒素追肥時期を遅延させ,その効果を検討したが,本系統の低登熟性,収量性を改善するには至らなかった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2018年度においては,2017年度で作成したNILsと,これとは別の遺伝的背景を持つNILsの2種類を用いて,登熟関連3遺伝子座上アレル1とアレル2の効果を測定し,片方のNILsでAPL2座上アレル2のみの登熟向上効果が示された.以上のように,当初の計画どおり独自に開発したNILsを用いて,研究目的の一部は達成できている.しかしながら,2018年度では,当地(和歌山県北部)は8月中の材料の出穂期前後の期間が平年以上の高温条件下で推移したためか,また,9月になって台風等の被害も蒙り,登熟上の系統間差異が例年とは異なる傾向を示した.
2018年度では,2017年度での予備的実験によって調整したウェスタンブロット手法が有効に機能し,従来の発育胚乳中ADPグルコースピロホスホリラーゼ活性や定量RT-PCRに加えてタンパク質発現レベルで上記の登熟関連3遺伝子座上アレルの効果を検証することができた.結果的には,登熟程度の系統間変異との明確な対応関係は得られなかったが,2019年度に再度同じ2種類のNIL集団を用いて良登熟型アレルの機能検証が可能である.
また,ツブマサリの登熟向上,収量増加の栽培技術的操作による達成については,後期追肥時期の遅延による手法を検討したが,結果的には増収に至らなかった.一方で,後期追肥の時期の調整ではなく追肥量の増加によって目的を達成できる可能性も把握できた.したがって,様々な問題点を明らかにしつつ,研究全体の進捗状況はおおむね良好であるといえる.

今後の研究の推進方策

2019年度は,本研究の最終年度に当たる.この年度では,2018年度で確立した2種類のNIL集団を再び用いて,出穂,登熟期が高温で推移した2018年度とは異なる環境下で登熟程度を精密に測定する.さらに,2018年度で確立した手法により,2019年度においても3遺伝子座の定量RT-PCRによる遺伝子発現の解析,出穂後の発育胚乳におけるADPグルコースピロホスホリラーゼ活性の測定,および本酵素小サブユニット2と大サブユニット2およびショ糖トランスポーター1のウェスタンブロット分析による定量を行う.これには,2018年度には行われなかったNIL-Bをも対象として検討する.これによって,各遺伝子座におけるアレル2とアレル1の間の違い,すなわちアレルの主効果とともに,3座上アレル間のエピスタティックな相互作用を,異なる遺伝的背景をもつNIL集団によって明らかにする.
超極穂重型系統ツブマサリの低登熟性改善に向けた栽培技術的アプローチについても,窒素代謝等の定量的検討をも加味しつつ追及する予定である.具体的には,ツブマサリに対する出穂期直前までの追肥総量を増加し,出穂期以降の成長解析によって乾物生産量に及ぼす効果を解析するとともに,このアプローチが本系統での多収をもたらしうるか否かについて検討する.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 世界イネコアコレクションを含む品種間におけるイネ登熟関連3遺伝子座上アレルに関する分布2018

    • 著者名/発表者名
      加藤恒雄・堀端章
    • 学会等名
      日本作物学会第246回講演会

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi