研究実績の概要 |
本課題では全研究期間を通じて以下の成果を得ることができた。 2017年度は湛水・還元耐性に寄与するテオシント染色体領域が逆位の状態で第4染色体に導入されているトウモロコシ自殖系統IL#18bおよびこれが由来する自殖系統Mi29において、還元処理した個体のde novo RNA seq解析を実施し、約19万のORF配列を取得した。 2018年度は上記de novo RNA seq解析で得たORF配列情報とトウモロコシのリファレンスゲノムの配列を比較し、リファレンスゲノム上の単位塩基数当たりに含まれる変異型ORF配列の頻度を確認することで、トウモロコシに導入されているテオシントゲノムの物理的領域を推定することに成功した。即ち、逆位領域では他の領域と比較し、変異型ORF配列の頻度が高い。このことを指標として大凡の逆位領域を特定するに至った。 2019年度から2020年度にかけては、自殖系統IL#18bにあるテオシント染色体領域の構造を解析するため、ロングリードの情報が得られる次世代シーケンサーによる解析をPacBio SequelIIにより実施し、約1,000万リード(総塩基数約1900億bp)のデータを取得した。得られたリードをde novoアセンブリングし、1932のコンティグ(総塩基数約23億bp)を取得した。また、de novo RNA seq解析のリード数から還元処理の有無で発現量が変動すると思われる遺伝子群を抽出した。 今後、取得したゲノム配列情報により自殖系統IL#18bのゲノム構造の詳細を明らかにした上で、還元処理の有無で発現量が変動する遺伝子をテオシント染色体領域にマッピングし、マッピングされた遺伝子と耐湿性との関連を明らかにする予定である。
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