研究課題/領域番号 |
17K07631
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
石丸 健 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 主席研究員 (80370641)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 倒伏 / 支持力 / NIL / 上米比率 / 半矮性 |
研究実績の概要 |
倒伏はイネ栽培における最も重要な障害であり、農家の収入減少に繋がる品質や食味そして収穫量の低下、労働時間の増加を引き起こす。私たちは倒伏に対する新たな改良ターゲットである支持力を2倍に強める遺伝子座(prl5)を見出している。本年度はprl5の実用性を明らかにするために、カサラスに由来するprl5の染色体領域を全ゲノムの0.1%以下に狭めた準同質遺伝子系統(NILprl5)を近傍の農家に類似した方法(機械植え)で栽培し、収量、食味等の評価を行った。収穫前の長雨によりコントロールのコシヒカリでは大々的に倒伏が発生したが、NILprl5では倒伏の発生は見られなかった。1.8mmの篩い目を用いて選別すると千粒重は5%有意に高く、個体当たりの精玄米重はコシヒカリに比べ約10%増加した。prl5が収量等の重要形質に悪影響を与えずに耐倒伏性を高めることを明らかにした。 近年、消費者の嗜好の変化により「粒ぞろい」の良いお米が好まれる傾向があり、玄米の選別には従来の1.8mmから、1.9や2.0mmといった大きな篩目が用いられつつある。NILprl5はコシヒカリに比べ粒厚が大きく、篩い目1.9mmによる選別では上米比率が36%増加し、2.0mmでは2倍以上の高い値を示し、組換体による補完実験は必須であるが、prl5は耐倒伏性に加え粒厚を大きくする作用を持つと推測された。本年度得られた成果から総合的に判断すると、prl5は実用性が高く、NILprl5は育種素材として有用で有ると評価した。また、prl5の近傍に新規の半矮性ローカス(SD-5)を見出した。今後このローカスに関しても解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算スケジュールの関係から当初の計画を入れ替え、prl5の作用機構の解明については次年度行うこととして、本年度はprl5の実用性の評価を主な目的として、近傍の農家に準じる方法で栽培し耐倒伏性や収量特性を中心に行った。その結果、得られた成果から、prl5は実用性が高く、NILprl5は育種素材として有効で有ると評価することができた。また、prl5の近傍に新規の半矮性ローカス(SD-5)を見出した。総合的に判断して研究は順調に進捗したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
prl5は下位葉の老化を遅らせることで、茎に炭水化物を蓄積させ、茎の柔軟性を保つことで耐倒伏性を高めることを明らかにしている。本研究では更に分子レベルで作用機構を理解するために、prl5の作用部位並びに時期の特定と老化を遅れさせるメカニズムを明らかにする。prl5の作用部位並びに時期を特定するために、葉身、葉鞘等の各部位における発現様式を経時的に解析する。また、糖がシグナルとして作用し、老化、乾燥や低温等の様々な環境耐性に関与していることが明らかにされつつある。一方でその上流の制御;シグナル作用を持つ糖含量がどの様に決定されるかほとんど分かっていない。代謝全体への影響を明らかにするためメタボローム解析により、ショ糖合成の中間代謝物含量の変化とprl5との関係を解析する。解析には、prl5の作用を特定した部位を用いる。見出したSD-5に関しても、有用性を評価するために収量特性や節間長をsd-1と比較する。prl5の粒厚に及ぼす作用に関しても組換体を用いて確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算スケジュールの関係から計画を入れ替え、prl5の作用機構の解明については次年度行うこととして、本年度はprl5の実用性の評価を主な目的として、近傍の農家に準じる方法で栽培し耐倒伏性や収量特性を中心に行った。そのため機能解明に必要なマイクロアレイ解析等の経費を繰り越した。また、本年度の解析によりNILprl5は粒厚がコシヒカリより有意に大きく、篩い目1.9mm以上の上米比率が高い。近年、粒厚が大きく粒ぞろいの良いお米が好まれる傾向にあり、重要性が高い。この形質についてより正確かつ詳細に解析するために、自動選別器を購入する。
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