サツマイモより分離したエンドファイト細菌の菌株をサツマイモ苗に接種し、土耕ポットを用いて温室で栽培したところ、菌の接種により塊根の発達が促進された。そこで、サツマイモの無菌苗にこの菌株を接種し、塊根形成初期の根の生育に対する影響を観察したところ、細根の発達には大きな影響は見られなかったが、塊根の初期肥大がエンドファイトの接種により促進される傾向が認められた。一方、同じ時期の地上部の生育には菌接種の影響は認められず、また葉の光合成速度も菌接種により変化しなかった。これらのことから、菌接種による塊根の初期肥大の促進は、地上部の生育促進を介してではなく、根への直接的な影響である可能性が示唆された。そこで、菌接種に対するサツマイモの根の反応を遺伝子発現の面から解析するため、菌接種および非接種のサツマイモについて、塊根形成初期の根および細根を採取し、それぞれの部位からRNAの抽出を行った。抽出したRNAは純度を確認した後cDNAを合成し、シーケンスライブラリーを作成し、次世代シーケンサーを用いて遺伝発現の網羅的解析を行った。その結果、塊根形成初期の根および細根では、エンドファイトの接種によりストレス応答、シグナル伝達、代謝等に関連する多様な遺伝子発現の増減が認められた。今後、これらの遺伝子応答の特徴を明らかにし、エンドファイト接種によるサツマイモの塊根肥大促進のメカニズムを明らかにする予定である。
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