研究課題
(1) リンゴの小胞子培養: 10品種の小胞子培養を行った。中心花紅蕾期の花叢を採取し、4℃で3日間および10日間の低温処理を行った。小胞子密度は4区を設定した。実験の結果、‘ふじ’等の4品種で小胞子培養によるカルス形成および心臓型胚の形成を確認した。4品種のカルス形成率、低温処理日数には有意差は認められなかった。小胞子密度は10の4乗個/mLが最適であった。(2) 倍加半数体品種‘95P6’の葯培養:供試した他品種より高い胚様体形成能・シュート形成能を示し、実験材料として好適であることが推察された。(3) 成長点に由来するカルスからのシュート再分化系: リンゴでカルスからの再分化実験に成功している先行研究を参考に、数種のシュート増殖培地、カルス誘導培地、カルス液体増殖培地、シュート誘導培地を用いて、成長点由来カルスからの再分化に有効な培養手順を探った。材料には継代で維持している‘ふじ’を使用した。カルスからのシュート再分化率およびカルス当たりのシュート本数が最も高かった手順は、「成長点切り出しまでの増殖培地は1001培地、カルス誘導培地はCaboni、カルス誘導培地から直接Caboniのシュート誘導培地に置床」であった。(4)珠心細胞に由来する細胞からのシュート再分化系:開花後30日、40日、50日の‘ふじ’、‘王林’、‘千秋’の珠心細胞を供試し、カルス誘導培地に60日間置床後、不定胚誘導培地に置床した。培養は25℃暗黒条件で行った。実験の結果、開花後30~40日の果実から採取した珠心細胞から不定胚が得られた。以上のように、小胞子培養の可能性が示され、成長点に由来するカルスからの直接シュート再分化、珠心細胞からの胚様体形成に成功した。今後、リンゴ育種の効率化のため、これらの技術をゲノム編集に適用して行く必要がある。
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Breeding Science
巻: 69 ページ: 410-419
10.1270/jsbbs.18197