研究課題/領域番号 |
17K07637
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
佐藤 達雄 茨城大学, 農学部, 教授 (20451669)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱ショック / トマト / キュウリ / 熱ショック転写因子 / 熱ショックエレメント / 熱ショック誘導病害抵抗性 |
研究実績の概要 |
病原菌感染時の植物の反応としては、サリチル酸をシグナルとした病害抵抗性(SAR; 全身獲得抵抗性)が知られている。これまでの研究で、熱ショックにより植物に全身的に誘導される病害抵抗性(熱ショック誘導抵抗性; HSIR)もサリチル酸をシグナルとした情報伝達を示すためSARを内含していると考えられるが、並列して熱ショックタンパク質が関与する情報伝達系も作動することが示唆されている。本研究では材料にトマトを用い、熱ショック処理後の細菌性病害に対する抵抗性の変化、葉中サリチル酸含量の変化ならびに病害抵抗性関連遺伝子の発現経過を調査したところ、トマトに熱ショックを処理することにより、SARが活性化する前に熱ショック転写因子が活性化し、病害抵抗性関連遺伝子を含む熱ショックエレメントを持つ遺伝子群の発現を制御している可能性が明らかになった。このため熱ショックタンパク質hsp90ならびに熱ショック転写因子hsfA2が病害抵抗性誘導に及ぼす影響をRNA干渉法によって解明することとした。まず、Infusion cloningのためのプライマーデザインを行うとともにトマト培養細胞を入手し、培養条件を検討した。細胞の成長速度が遅く、現在、増殖中である。この他、植物材料としてキュウリ、病原菌としてうどんこ病菌を用いて糸状菌病害に対するHSIRの発現機作をトマトと同様の手法を用いて検証した。その結果、トマト同様、熱ショックによりうどんこ病抵抗性を誘導することは可能であり、熱ショックタンパク質阻害剤ゲルダナマイシンの処理は抵抗性誘導に有効であったが、熱ショック転写因子の発現速度はうどんこ病抵抗性の発現速度に比較して遅かった。このため現在、サリチル酸濃度の変化を調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、予想より早く研究を出版でき、よりチャレンジングなRNAサイレンシングを利用した新しいトピックに着手したが、供試するトマト培養細胞の成長速度が予想より遅く、また、コロナウイルス感染症による登校禁止もあり足踏み状態である。
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今後の研究の推進方策 |
植物種ではトマトとキュウリ、病原菌では細菌と糸状菌の比較により、複数のHSIRの反応のどれが主として機能するか異なる可能性が明らかになりつつある。現在の研究を引き続き進行するとともに様々なbiostimulantのメカニズムについても比較検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予想よりも実験材料の成長が遅く消耗品の購入が少なかった。次年度はキュウリなど他作物との比較のために十分な予算を投入するとともに続報となる論文の投稿、学会での発表を行う予定である。
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