研究実績の概要 |
現存する交配種の親の一つであるT.fournieriに含まれるアントシアニンは、マルビジン3,5-ジグルコシド、ペオニジン3,5-ジグルコシド、ペチュニジン3,5-ジグルコシド、デルフィニジン3,5-ジグルコシド、シアニジン3,5-ジグルコシドおよびペラルゴニジン-3,5ジグルコシドの6種であることが明らかとなった。 未利用の3種を含む合計6種のトレニア原種の相互交雑により、新たな14組合せで植物体を得ることができた。得られた植物は葉緑体DNAをターゲットとしたPCR-RFLPにより、全てが真の雑種であることが確認された。この14組合せのうち13組合わせは、これまで雑種獲得の報告のない新規交配種である。得られた雑種は両親の中間の染色体数を示し、花および茎葉の形質は両親の中間であった。 得られた雑種は全て不稔性を示した。遺伝資源として利用するためには稔性の回復が求められる。in vitroで育成した植物の葉を用いて、葉外植体に人為的に細かな傷を付けそれをベンジルアミノプリンを含む培地で培養することで効率的な不定芽再生系を確立した。 この研究で得られた交配種を基礎にさらに変異の幅を広げるために戻し交配を試みた。(T.fournieri x T.baillonii)をそれぞれ親に戻し交配した結果、(T.fournieri x T.baillonii)x T.fournieriでは花色の変化は少ないものの花弁周縁部の切れ込みが出現し、この個体を自家受粉した後代は、花弁周縁部の切れ込みを持ちかつ多様な花色を示した。一方(T fournieri x T.baillonii)x T.bailloniiでは染色体数が2n=16であるものと2n=17であるものが出現し、2n=16個体のみが花粉稔性を有していた。この自家受粉後代もまた多様な花色を示した。
|