研究課題/領域番号 |
17K07641
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
高村 武二郎 香川大学, 農学部, 教授 (40253257)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シクラメン / 種間交雑 / 種間雑種 / 生育サイクル / 倍加 |
研究実績の概要 |
まず,C. hederifoliumとC. purpuarscensとの種間雑種の生育特性を調査した.C. hederifoliumでは通常5月の終わりから9月にかけては出葉も出蕾も認められないが,9~11月まで出蕾・開花が認められ,花が終わった頃から出葉が認められる.一方,C. purpurascensは多くの場合は常緑で,9月以降や春先に開花したりするものも存在するが,多くのものは6~9月上旬に開花する.種間雑種では,多くの個体で6~11月にかけて出蕾・開花が認められ,両種の中間的な生育サイクルを示した.出葉も出蕾も認められない明確な休眠期を示す個体はほとんどなかったが,7~9月には花芽のみで葉を有さない個体も多く認められた.また,12~5月中旬にかけてはすべての個体が葉を有していたが,ほとんどの個体が花芽を有していなかった.また,複色花園芸品種とシクラメン野生種との種間雑種個体において,複色花形質を示す個体を確認し,種間雑種においても園芸品種特有の複色花形質を発現させることが可能であることを示した. また,C. hederifoliumとC. purpuarscensとの種間交雑後の胚珠培養時に1 μM アミプロホスメチル (APM)を用いて4, 7または14日間の処理を行った. その結果, いずれの処理区においても複二倍体と考えられる個体は認められなかったが,種間雑種は得られた. 一方,Cyclamen hederifoliumとC. purpurascensとの種間交雑で得られた種間雑種を用いて,アミプロホスメチル (APM)によるin vivoでの倍加処理を試みたが,倍加シュートは得られなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,A) 未利用遺伝資源を用いた種間交雑と染色体操作による遺伝資源開発,およびB) 異なるゲノムを有する種間雑種における種特異的な形質・特性の発現様式の把握という2つの課題について検討・解明し,シクラメンの未利用遺伝資源を活用した新しい露地栽培型シクラメン(いわゆるガーデンシクラメン)の育種素材開発に寄与することである.本年度はこのうち主に B)に関する実験を行った.その結果,C. hederifoliumとC. purpurascensとの種間雑種の生育サイクル,複色花園芸品種とシクラメン野生種との種間交雑において,園芸品種特有の複色花形質を有する種間雑種作出が可能であることを示した.また,A)においても複二倍体作出に課題は残るものの,安定してC. hederifoliumとC. purpurascensとの種間雑種を作出するプロトコールが確立されつつある.これらのことを総じて上記のように判断した.
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今後の研究の推進方策 |
まず, C. hederifoliumとC. purpurascensでは, 安定して種間雑種を作出する技術は確立されつつあることから,今年度は前年度までに行った結果を基に,最適条件を再検討し,効率的な種間雑種作出法を確立する.一方,C. coumまたはC. alpinumとC. mirabileとの種間交雑では,雑種獲得率が著しく低いことから,雑種獲得の効率化と得られた雑種の維持・増殖について検討する.また,種間雑種の不稔性から種間雑種の安定増殖法の確立が望まれるため,複二倍体の作出または栄養繁殖法による安定増殖法の確立を試みる. また,前年度までの生育サイクルの解明に引き続いてC. hederifoliumとC. purpurascensや園芸品種と野生種との種間雑種等について,花色発現などの特性を解析し,種間雑種における異ゲノム存在下での形質・特性の発現様相を明らかにする. 以上の成果と前年度までの成果を総合的に解析し,シクラメンの未利用遺伝資源を活用した新しい露地栽培型シクラメンの育種素材開発の可能性と方向性について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の価格変動等により,微額の次年度使用額が生じたが,全体的な予算の執行に影響を及ぼす額ではなく,次年度の消耗品等の購入に充てる予定である.
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