研究課題/領域番号 |
17K07645
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
一色 司郎 佐賀大学, 農学部, 教授 (40253588)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | S. macrocarpon / 雄性不稔 / 花粉稔性 |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞質置換のための他の方法として、コルヒチン核置換法を利用した。コルヒチン核置換法とは、コルヒチン処理によって親の複二倍体を育成し、これが可稔の場合に、栽培種を反復親として連続戻し交雑を行っていく方法である。本研究では、S. macrocarponのF1にコルヒチン処理を施して複二倍体を作出し、さらに複二倍体を自殖し複二倍体実生を、複二倍体実生にナス‘Uttara’を花粉親として戻し交雑を行いBC1およびBC2を作出し、新たな雄性不稔系統の開発を目指した。 花粉稔性を調査した結果、花粉染色率はBC1が38.3%、BC2は25.2%と大きな変化は見られなかったものの、花粉発芽率はBC1で6%であったのに対してBC2では0%となり、花粉の発芽は確認できなかった。 種子稔性を調査した結果、結果率は複二倍体実生から比較すると低下こそしているが、BC1からBC2にかけては回復したので、今後さらに回復する可能性がある。その一方で、1果あたりの種子数に関しては、ナス‘Uttara’の花粉を用いた人工授粉ではBC2の果実から種子を得ることができなかった。これは複二倍体を経由したことが影響したためだと考えられる。複二倍体を経由したことで、それぞれ自殖実生が4倍体、BC1が異質3倍体、BC2では異数体であると考えられる。したがって、BC1およびBC2では二倍体と同数の染色体ではなかったことで、遺伝子間で何らかの不調和が生じ、細胞質置換による雄性不稔性の発現だけでなく、種子稔性の低下が起こっているものと考えられる。 以上の結果に加えて葯の裂開も見られていないことから、S. macrocarponの細胞質を利用したナスの細胞質置換系統は雄性不稔性を有しており、今後、新たなナスの雄性不稔系統の開発が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況はほぼ予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
Solanum macrocarponの細胞質を利用したナスの細胞質置換系統は雄性不稔性を有しており、今後、新たなナスの雄性不稔系統の開発が期待できる。しかし、そのためにはBC2を種子親とする戻し交雑で種子を獲得し、後代を作出する必要がある。例えばBC1を用いてもう一度戻し交雑を行い、新たなBC2を作出する方法や、ナス‘Uttara’以外の栽培種を花粉親として用いる方法などといった、後代を得るための方法を模索する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で本来行くべき学会が行けなくなったので予算を使い切れなかった。
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