本研究ではSolanum macrocarponの細胞質を利用したナスの雄性不稔系統の開発を目指した。 本研究でBC2のクロロプラストDNAとミトコンドリアDNAを調査した結果、戻し交雑後代は種子親であるS. macrocarpon型を示していることから、細胞質がS. macrocarponから戻し交雑後代へ母性遺伝していると考えられる。 花粉稔性を調査した結果、花粉染色率はBC1が38.3%、BC2は25.2%と大きな変化は見られなかったものの、花粉発芽率はBC1で6%であったのに対してBC2では0%となり、花粉の発芽は確認できなかった。種子稔性を調査した結果、結果率は複二倍体実生から比較すると低下こそしているが、BC1からBC2にかけては回復したので、今後さらに回復する可能性がある。その一方で、1果あたりの種子数に関しては、ナス‘Uttara’の花粉を用いた人工授粉ではBC2の果実から種子を得ることができなかった。これは複二倍体を経由したことが影響したためだと考えられる。複二倍体を経由したことで、それぞれ自殖実生が4倍体、BC1が異質3倍体、BC2では異数体であると考えられる。したがって、BC1およびBC2では二倍体と同数の染色体ではなかったことで、遺伝子間で何らかの不調和が生じ、細胞質置換による雄性不稔性の発現だけでなく、種子稔性の低下が起こっているものと考えられる。 以上の結果に加えて葯の裂開も見られていないことから、S. macrocarponの細胞質を利用したナスの細胞質置換系統は雄性不稔性を有しており、今後、新たなナスの雄性不稔系統の開発が期待できる。
|