研究課題/領域番号 |
17K07648
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
片山 礼子 (池上礼子) 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (00549339)
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研究分担者 |
高木 宏樹 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (80616467)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | proanthocyanidin / enzyme / persimmon / tannin cell |
研究実績の概要 |
カキのプロアントシアニジン(PA)蓄積に関連して、カキ果実におけるプロアントシアニジン蓄積に関わる重要なステップであるガレート形成およびポリマー形成について明らかにすることを目的として研究を進めた。 これまでの報告では、dehydroquinate dehydratase-shikimate dehydrogenase (DHD/SDH)が没食子酸生成酵素であるとされているが、カキのアイソフォームにはその活性が認めらない。また、チャにおいてserine carboxipeptidase-like protein (SCPL)がflavan 3-olsへの没食子酸転移酵素であるという報告があるが、22遺伝子について配列が挙げられているだけで、機能同定はなされていない。本年度は‘倉光’幼果および幼葉から粗酵素を抽出し、3-デヒドロシキミ酸およびシキミ酸を基質とした没食子酸生成および、没食子酸をflavan 3-olsに転移する酵素の活性を確認するための予備試験を行った。 ポリマー形成は、LARやANSの関与が示唆される論文が近年発表されたが、flavan 3-olsにシステインを転移する反応については未だ報告がない。これまでにカキ果実より単離した1-cys peroxiredoxin,についてその可能性を確認するためにin vitroおよびカキの形質転換による試験の準備を行った。 また、PAの蓄積変異体である完全甘ガキの特性化のために電子顕微鏡による完全甘ガキ羅田甜柿、松本早生富有および完全渋ガキ最勝におけるタンニン細胞の組織観察を行うために樹脂包埋を行った。さらに、経時的に採取した羅田甜柿、天宝蓋、駿河および倉光についてPAの構成flavan 3-olsおよび没食子酸の経時的変化を調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のカキの研究以外に、ブドウの成熟および着色に関する研究の論文執筆および試験行った。具体的には‘ルビーロマン’の温度処理による着色への影響に関する論文3報、‘ルビーロマン’および‘安芸クイーン’の着色特性の差異についてである。アントシアニン蓄積およびこれに影響すると考えられるABAとその代謝関連遺伝子の解析について取りまとめている。‘ルビーロマン’はこれまでに報告された品種とは異なり、ABAの代謝およびアントシアニンの蓄積が成熟期に高いことが明らかになった。また、高温下においてこれまで発現が低くなると報告されているアントシアニン蓄積に関わる遺伝子発現が高く推移することから、成熟期の高温下での着色抑制に関する問題提起を行えた。 さらに、マンゴーの着色に関わるアントシアニン合成に関わる酵素flavonoid 3-O-glucosultransferase(F3GT)の性状解析を行っている。マンゴーには光に反応して発現が上がる2つのF3GTがあるが、これらの遺伝子を大腸菌で発現させ活性のある融合タンパクを得ることに成功した。面白いことに、グルコース転移活性は両遺伝子がコードするタンパク質に認められるが、片方にのみ存在するガラクトース転移活性はグルコースの転移活性よりもずいぶん高いことが確認された。アントシアニンにはガラクトシドを主に蓄積する種とグルコシドを蓄積する種に分かれるが、その進化的機作は大変興味深い。
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今後の研究の推進方策 |
上記の試験をさらに進めるとともに、これまでにカキ果実より単離したシキミ酸生合成経路上の2機能性酵素である3つのDHD/SDHについて、GSTタグをつけたタンパク質を産生し、in vitroアッセイによる酵素の性状解析を進める。1-cys peroxiredoxin, ANR、ANS、LARについてタンパク質産生のための大腸菌での異所発現やカキの形質転換試験を行い、形質転換体が得られれば、その形質転換個体についてRNAseqを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請よりも減額されたため、次年度の消耗品に幾分か残した。
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