研究課題/領域番号 |
17K07649
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
高居 恵愛 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (70589770)
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研究分担者 |
片山 礼子 (池上礼子) 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (00549339)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アントシアニン生合成 / 植物ホルモン / ABA代謝 / 成熟関連遺伝子 / 遺伝子発現解析 / RNA-Seq解析 |
研究実績の概要 |
本研究の研究計画では、平成30年度にこれまでの各種処理実験で得られた成熟・着色表現型の異なる果実における成熟・着色に関連遺伝子の発現解析とRNA-Seq解析を行い、表現型の異なる各種果実に特化した関連遺伝子群をリスト化し、成熟・着色の起因となる候補遺伝子や、果実成熟の進行に関与すると考えられる因子とMybAの発現を誘導する上流の制御因子を探索する予定であった。 本年度で実施した研究内容および得られた主な結果は以下の通りである。① ‘ルビーロマン’ポット栽培樹を用いた温度処理試験の果実サンプルにおける内生ABA、IAAとサイトカイニン及びそれぞれの代謝物の含量を測定し、また② アントシアニン生合成関連遺伝子(MybA1-2, MybA1-3, UFGT, F3’H, F3'5'H)とABA代謝関連遺伝子(NCED1, ABA-BG, ABA-GT, CYP707A, ABF2)の発現解析を行った。その結果、昨年度で果粒を用いた温度処理実験と同様な結果が得られ、即ち、高温条件下でアントシアニン生合成が抑制されたが、内生ABA含量とMBYA遺伝子の発現が促進された。これらの結果から、アントシアニン生合成においてABAを介したMYBA転写因子による調節とは異なる機構が存在する可能性が示唆された。③ 4種類の台木(半わい性台木‘5BB'と強勢台木‘Hybrid Franc'およびそれらの4倍体)に接木した‘ルビーロマン’の異なる生育段階の果皮サンプルを用いてトランスクリプトーム(RNA-Seq)解析を行い、また、果粒を用いた温度処理の果皮サンプルのRNA-Seq分析のため、Total RNAを抽出し、cDANライブラリーを作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① 成熟・着色表現型の異なる果実の材料収集:‘ルビーロマン’、‘安芸クイーン’地植栽培試験、異なる樹勢の台木に接木した‘ルビーロマン’の栽培試験、ポット‘ルビーロマン’の温度処理試験、‘ルビーロマン’、‘安芸クイーン’果粒を用いた温度処理実験を行い、果実生育を調査し、成熟表現型の異なる果実サンプルを取得した。 ② 植物ホルモン含量の測定:上述処理試験で得た果実における内生ABA、IAAとサイトカイニン及び代謝物の含量を測定し、果実成熟過程における内生植物ホルモンの動態変化を調査し、果実成熟・着色に果たす役割を検討した。 ③ 遺伝子発現解析:上述果実サンプルにおけるアントシアニン生合成関連遺伝子(MybA1-2, MybA1-3, UFGT, F3’H, F3'5'H)とABA代謝関連遺伝子(NCED1, ABA-BG, ABA-GT, CYP707A, ABF2)の発現解析を行った。 ④ 網羅的の発現解析による未知の成熟制御因子の探索:一部の処理試験の果実を用いてRNA-Seq解析を行っている。 以上一連の研究により、植物ホルモンによる成熟・着色の調節は、ABAを介したMYBA転写因子によるアントシアニン生合成系の調節以外に決定的な制御が存在する可能性が示唆された。現在、果粒による温度処理試験で得た果実サンプルを用いて、RNA-Seq解析を行うとともに、シークエンシングデータの解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度では、上述のRNA-Seqのシークエンシングデータを解析し、これら表現型の異なる果実に特化した関連遺伝子群をリスト化し、ベレゾーンの起因となる候補遺伝子や、果実成熟の進行に関与すると考えられる因子とMybAの発現を誘導する上流の制御因子を探索し、候補遺伝子の機能解析を行う。また、植物ホルモン、特にABAが果実成熟における役割を明らかにするため、ABA応答関連遺伝子や受容体、シグナル伝達系遺伝子の発現解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に実行予定のRNA-Seq解析について、現在、温度処理試験の果実サンプルからTotal RNAを抽出し、cDNAライブラリーを作成している際中である。その準備ができた次第次世代シークエンシングを外注委託する。RNA-Seq解析の委託費として次年度使用額が生じた。
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