本研究の計画では、平成30年度以降、これまでの各種処理実験で得られた成熟・着色表現型の異なる果実における成熟・着色に関連遺伝子の発現解析とRNA-Seq解析を行い、表現型の異なる各種果実に特化した関連遺伝子群をリスト化し、成熟・着色の起因となる候補遺伝子や、果実成熟の進行に関与すると考えられる因子とMybAの発現を誘導する上流の制御因子を探索することとなっていった。 2019年度で実施した研究内容および得られた主な結果は以下の通りである。① 4種類の台木に接木した‘ルビーロマン’樹を用いて環状剥皮処理試験を行った。全種類の台木とも環状剥皮処理樹は対照樹より果実の成熟と着色が促進されたが、促進効果は台木品種によって異なった結果が得られた。この試験で様々な成熟・着色表現型の果実を得ることができた。② 上述の処理試験で経時的に果実と栄養器官(芽と葉)を採取し、こられのサンプルにおける内生植物ホルモン含量、果実における各種生理的の変化(糖度、酸度、アントシアニン等)を調査した。その結果、環状剥皮処理による着色促進効果が高いほど果実におけるABA含量も高かった。これらの結果から果皮アントシアニン生合成は内生ABAと正の関係があることをさらに証明した。③ 着色パターンが異なる2品種の赤色系ブドウ‘ルビーロマン’と‘安芸クイーン’の果粒を用いた温度処理試験のサンプルについてRNA-Seq解析を行った。一部の成熟と着色関連遺伝子の発現解析を行ったが、成熟関連遺伝子群のリスト化や、MybAの発現を誘導する上流の制御因子などについて現在解析進行中である。
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