研究課題/領域番号 |
17K07650
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
梅原 三貴久 東洋大学, 生命科学部, 教授 (30469895)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ストリゴラクトン / マイクロトム / CCD8 / MAX1 / LBO / 果実形質 / Phelipanche aegiptiaca / LC-MS/MS |
研究実績の概要 |
本研究では、果実形成におけるストリゴラクトン(SL)の役割とトマトにおけるSL生合成経路を明らかにするために、SlCCD8、SlMAX1、SlLBO遺伝子が欠損したSL生合成欠損系統の果実形質評価、SL欠損系統の接ぎ木実験、SLの定量分析を行った。また、SLは根寄生植物の発芽を誘導するため、トマトを含む様々な農作物が根寄生植物による被害を受けている。そこで、トマトSL欠損系統が根寄生植物対策に利用できるか検証するために、根寄生植物の感染実験を実施した。 1.SlCCD8欠損系統を用いた評価 SlCCD8欠損系統の成熟果実の割合、果実重量、果実の縦の長さと横の長さ、種子の数、開花までの日数、果実の成熟にかかる日数、糖度、酸度などの果実形質評価を行った。野生型マイクロトムとSlCCD8欠損系統では、果実形質に大きな差は認められなかった。また、果実形成・成熟中のSlCCD8遺伝子の欠損を戻し交雑で導入し、BC1作出した。次に、ライゾトロン法で、トマトに寄生するPhelipanche aegiptiacaの感染実験を行い、SlCCD8欠損系統における根寄生植物の感染率を評価した結果、SlCCD8欠損系統周辺のP. aegiptiacaの発芽率は野生型よりも低下し、感染率も減少傾向を示した。 2.SlMAX1欠損系統およびSlLBO欠損系統を用いた評価 TILLING法で探索したSlMAX1欠損系統8系統、SlLBO欠損系統7系統について、劣勢ホモ変異体の探索、枝分かれの数、 LC-MS/MSを用いたSLの定量分析、根寄生植物の発芽試験を行った。このうち、劣勢ホモ変異体で枝分かれの数が増加し、かつSL量が野生型よりも減少していた系統は、SlMAX1欠損系統で2系統、SlLBO欠損系統で2系統存在した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度は、SlCCD8欠損系統については、果実形質評価、SL欠損系統の接ぎ木実験、SL定量分析、Phelipanche aegiptiacaの感染実験を行い、SlCCD8欠損系統の生育特性についてほぼ必要な情報が出揃った。SlMAX1およびSlLBO欠損系統については、劣勢ホモ変異体探索、枝分かれの数とSL定量分析を行い、SL欠損の表現型を示す変異体を絞り込み、各2系統ずつ劣性ホモ変異体でSL欠損した系統が得られた。初年度としては、かなり順調に研究が進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に作出した栽培トマトバックグランドのSlCCD8変異体ホモ系統について、生育特性評価を実施する。評価項目は草丈の長さ、枝分かれの数、成熟果実の割合、果実重量、果実の縦の長さと横の長さ、種子の数、開花までの日数、果実の成熟にかかる日数、糖度、酸度で、野生型とSLを産生できない栽培トマトでは、生育にどのような差が生じるかを明らかにする。栽培トマトバックグランドのSlCCD8変異体ホモ系統における内生SL含量について評価する。まず、LC-MS/MSを用いて4デオキシオロバンコール、オロバンコール、ソラナコールなどの分析を行う。また、水耕栽培を行い、根寄生植物ヤセウツボ(Orobanche minor)の種子発芽試験を行い、SlCCD8変異系統の根滲出液における発芽刺激活性を評価する。大阪府立大学で、ライゾトロン法を用いてトマトに寄生するPhelipanche aegiptiacaの感染実験を行い、栽培トマトバックグランドのSlCCD8欠損系統における根寄生植物の感染率を評価する。これらの実験データを取りまとめ、根寄生植物に対するSL欠損系統の応用の可能性について検証する。 LC-MS/MS分析いついては、SL生合成中間体カーラクトンやもう一つのトマトの内生SLであるソラナコールの定量分析系を確立する。 SlMAX1とSlLBO欠損系統については、平成29年度に引き続き、標的遺伝子以外の変異を取り除くため、SlMAX1欠損系統およびSlLBO欠損系統の戻し交雑を継続して行う。 さらに、筑波大学との共同研究で、CCD8の上流の生合成遺伝子CCD7が欠損したマイクロトムの変異体をTILLING法で探索し、他の変異体のリファレンスとして使用する。
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