研究課題/領域番号 |
17K07650
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
梅原 三貴久 東洋大学, 生命科学部, 教授 (30469895)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ストリゴラクトン / マイクロトム / TILLING / CCD7 / CCD8 / MAX1 / LBO |
研究実績の概要 |
ストリゴラクトン(SL)の生合成は、ベータカロテンを基質としてD27という鉄を含むカロテノイドイソメラーゼ、カロテノイド酸化開裂酵素(CCD)のCCD7およびCCD8の働きによってSL生合成前駆体カーラクトンを産生する。CCD8の下流でシトクロムP450酸素添加酵素ファミリーのひとつ、CYP711A(MAX1)による酸化反応を経てSLが産生される。本研究では、トマトの果実形成におけるストリゴラクトン(SL)の役割とトマトにおけるSL生合成経路を明らかにするために、TILLING法でSL生合成欠損変異系統を探索し、その形質を評価した。まず、前年度までの研究成果のうち、SlCCD8欠損系統については、SL産生量、枝分かれの数や葉の老化などの生育特性評価、果実形質評価、根寄生植物Phelipanche aegyptiacaの感染率に関するデータの取りまとめが終わり、雑誌論文として報告した(Hasegawa et al. Int. J. Mol. Sci., 2018)。 次に、前年度までに得られたSlCCD8、SlMAX1、SlLBO欠損変異体について枝分かれの数に関する評価を行った。SL合成アナログGR24を購入し、SlCCD8およびSlMAX1欠損系統に処理すると、野生型と同程度まで抑制されることを確認した。しかしながら、SlLBO欠損系統の枝分かれの数については野生型とほとんど変わらなかった。現在、これらのSlCCD8、SlMAX1、SlLBO欠損変異体については戻し交雑を行っている。 さらに、SL生合成遺伝子でCCD8の上流で働くSlCCD7欠損系統をTILLING法で探索した。筑波大学遺伝子実験センターが保有する約10,000系統ものマイクロトムの変異誘発系統から、第1エキソンに変異を持つ系統が1つ、第6あるいは第7エキソンに変異を持つ系統が7つ得られた。これらの系統について、枝分かれの数、Orobanche minorの発芽率、SLの産生量などを順次確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、SlCCD8欠損系統については雑誌論文として報告することができた。また、SlMAX1およびSlLBO欠損系統に関するデータも揃いつつある。さらに、SlCCD8、SlMAX1、SlLBOに加えて、SlCCD7欠損系統も得られた。マイクロトムのストリゴラクトン関連変異系統が順調に充実してきている。
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今後の研究の推進方策 |
イネやシロイヌナズナではすでにSLの生合成経路が明らかになりつつある。しかしながら、トマトにおいてはカーラクトンより下流の経路がまだ明らかにはなっていない。SlCCD7欠損系統、SlCCD8欠損系統、SlMAX1欠損系統およびSlLBO欠損系統を接ぎ木して枝分かれの数への影響を調べ、また本学が保有するLC-MS/MSを用いてカーラクトン、カーラクトン酸、かーラクトン酸メチル、オロバンコールなどを定量することで、SlCCD8、SlMAX1、SlLBO遺伝子のSL生合成経路上の位置関係を明らかにする。カーラクトン類は非常に不安定で壊れやすいため、すでに分析系が確立されている研究室と連携して対応する。 さらに、筑波大学との共同研究で、SL輸送体PDR1が欠損したマイクロトムの変異系統をゲノム編集で探索し、合成されたSLの挙動についても調査を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に高純水製造装置の前処理カートリッジ交換が必要となったため発注したが、物品の納品が遅れたため、次年度使用額として繰り越すことになった。年度が開けたため、改めて納品を業者に依頼する。
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