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2019 年度 実施状況報告書

ストリゴラクトン生合成遺伝子欠損トマトの生育特性評価とその利用

研究課題

研究課題/領域番号 17K07650
研究機関東洋大学

研究代表者

梅原 三貴久  東洋大学, 生命科学部, 教授 (30469895)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードストリゴラクトン / マイクロトム / TILLING / LBO / D14
研究実績の概要

ストリゴラクトン(SL)の生合成では、まずβ-カロテンがイソメラーゼ、カロテノイド酸化開裂酵素 CCD7、CCD8の酵素反応を介してSL生合成中間体カーラクトン(CL)に変換される。その後、シトクロムP450のひとつである MORE AXILARY GROWTH1(MAX1)の酸化反応を経て、SLが合成される。さらに、シロイヌナズナでは2-オキソグルタル酸依存的酸化酵素であるLATERAL BRABCHING OXIDOREDUCASE(LBO)がSL生合成に関与すると報告されている。本年度は、トマトにおけるLBOの機能を明らかにするために、昨年度に引き続き、筑波大学が保有するマイクロトム(Solanum lycopersicum L.)の突然変異系統からSlLBO欠損系統を探索した。その結果、昨年度の2系統に加えてさらに1系統新たに発見した。この系統の枝分かれの数を測定したところ、野生型に比べて、SlLBO欠損系統で枝分かれの数がやや多かった。次に、Orobanche minorの種子を用いて発芽試験を行った結果、SlLBO欠損系統の根滲出液を処理した発芽率は、野生型の発芽率に比べて著しく低かった。しかし、LC-MS/MSを用いて同じ水耕液サンプルのオロバンコールとソラナコールのSL量を定量したところ、野生型とSlLBO欠損系統で有意な差が認められなかった。根の内生量についても分析したが、同様の結果であった。根寄生植物の発芽試験とLC-MS/MS分析の結果に矛盾が生じており、研究期間を延長して詳細な解析を進めることにした。さらに、SL受容体SlD14のTILLINGも行い、1系統発見した。植物ホルモンの情報伝達欠損変異体では、リガンドが蓄積することが多いので、LBOとD14と交配して二重変異体を作出することで、植物体内で蓄積する基質を調べることが可能になる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

3系統目のLBO変異体は、野生型に比べて枝分かれの数がやや多かった。これはシロイヌナズナですでに報告されている結果と類似している。Orobanche minorの種子を用いて発芽試験を行った結果、SlLBO欠損系統の根滲出液を処理した発芽率は、野生型の発芽率に比べて著しく低かった。ところが、LC-MS/MSを用いて同じ水耕液サンプルのオロバンコールとソラナコールのSL量を定量したところ、野生型とSlLBO欠損系統で有意な差が認められなかった。これらの結果から考えられる可能性として、このLBO変異体ではSL以外にOrobanche minorの種子発芽を抑制する因子が根から放出されていることが考えられる。入手したLBO変異体は、EMS処理によって生じたものであることから、LBO遺伝子以外の部分にも変異が挿入されており、その影響によるものと考えられる。今後の研究でこの矛盾を明らかにしていく必要がある。さらに、研究計画当初には予定していなかったSL受容体SlD14のTILLINGも行い、1系統発見することができた。植物ホルモンの情報伝達欠損変異体では、リガンドが蓄積することが多いので、LBOとD14と交配して二重変異体を作出することで、植物体内で蓄積する基質を調べ、LBOの基質と産物について調査することが可能となり、さらに本研究を進めるツールを手に入れることができたと考えている。

今後の研究の推進方策

これまでの研究で、マイクロトムのCCD7、CCD8、MAX1、LBO、D14が欠損した5種類のSL関連変異体を揃えることができた。順次戻し交雑を繰り返し行っており、他のSL研究者も利用できる状況を準備している。2-オキソグルタル酸依存的酸化酵素であるLATERAL BRABCHING OXIDOREDUCASE(LBO)がSL生合成にどのように関与しているのかはまだ不明な点が多い。今年度の研究で、SL生合成欠損変異体だけでなく、SL情報伝達欠損変異体としてD14欠損変異体がTILLINGで得られた。植物ホルモンの情報伝達欠損変異体では、リガンドが蓄積することが多いので、LBOとD14と交配して二重変異体を作出することで、LBOの基質や産物をLC-MS/MSを用いて調査する。また、今年度調査したSlLBO欠損系統におけるOrobanche minorの発芽率は野生型の発芽率に比べて著しく低いが、オロバンコールとソラナコールの量は野生型とSlLBO欠損系統で有意な差が認められないという不思議な結果が得られた。この結果を受け、研究期間を延長して追試を行い、原因を明らかにする。将来、この結果を引き起こす原因を突き止められれば、この系統を根寄生植物対策に利用できるかもしれない。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Strigolactones Decrease Leaf Angle in Response to Nutrient Deficiencies in Rice2020

    • 著者名/発表者名
      Masato Shindo, Shu Yamamoto, Koichiro Shimomura, Mikihisa Umehara
    • 雑誌名

      Frontiers in Plant Science

      巻: 11 ページ: 135

    • DOI

      10.3389/fpls.2020.00135

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Micro-Tom CAROTENOID CLEAVAGE DIOXYGENASE 8 mutants show low infection of Phelipanche aegyptiaca2019

    • 著者名/発表者名
      Shoko Hasegawa, Takuya Tsutsumi, Shunsuke Fukushima, Yoshihiro Okabe, Junna Saito, Mina Katayama, Masato Shindo, Yusuke Yamada, Koichiro Shimomura, Kaori Yoneyama, Kohki Akiyama, Koh Aoki, Tohru Ariizumi, Hiroshi Ezura, Shinjiro Yamaguchi, Mikihisa Umehara
    • 学会等名
      IPGSA conference 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Phenotypic analysis of strigolactone-deficient mutants in rice and tomato2019

    • 著者名/発表者名
      Mikihisa Umehara
    • 学会等名
      The 2nd International Conference on Plant and Molecular Biology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 生命科学部 応用生物科学科 植物生長制御研究室 Umehara Lab.

    • URL

      http://www2.toyo.ac.jp/~umehara/plant_biotechnology/Welcome.html

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公開日: 2021-01-27  

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