トマトのD14は、第4染色体上に1コピー存在する(Solyc04g077860)。CRSPR/Cas9を使ったゲノム編集でマイクロトムのSlD14欠損変異体を作出し、第1エキソンに欠失と挿入を含む変異体が2系統(d14-1、d14-2)得られた。これらの変異体では、いずれもフレームシフトが生じ、配列途中に終始コドンが入ったことで加水分解酵素の触媒三つ組残基のHisとAspが欠損していた。野生型やストリゴラクトン (SL)生合成欠損変異体とともに水耕栽培を行い、枝分かれの数の測定、根寄生植物Orobanche minorの発芽試験によるSL産生量の推定、根滲出液および根の内生SLオロバンコールおよびソラナコールのLC-MS/MS分析を行った。d14-1およびd14-2の枝分かれの数はいずれも野生型の約2倍に増加した。SL合成アナログGR24を1 μMで処理すると、SL 生合成変異体ccd8およびmax1の枝分かれは野生型と同数まで減少したのに対し、d14-1 およびd14-2 の枝分かれの数は減少しなかった。さらに、d14のSL量は野生型より多く蓄積しており、d14の根滲出液をOrobanche minorの種子に与えると野生型より高い発芽率を示した。したがって、ゲノム編集で作出したd14-1およびd14-2はノックアウト変異体として利用できると考えられる。また、D14とよく似た配列を持つSlD14LIKE(D14L)遺伝子は、トマトの第2染色体上に4コピー存在する(Solyc02g064760、Solyc02g064770、Solyc02g092760、Solyc02g02g092770)。D14Lはカリキンという植物が燃焼した際の煙に含まれる種子発芽促進物質の受容に関わっている。現在、D14同様、D14L欠損した変異体をゲノム編集で作出し、形質を調査している。
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