冬季の低温のように植物の生存に不利な環境下での開花を抑制するシステムである低温春化型の開花は、園芸植物の栽培化の過程で失われた形質の一つである。本課題ではカーネーションに近縁のナデシコ属野生種に存在する低温春化型の開花制御機構を解明するために、詳細連鎖地図を活用したマップベースクローニング法ならびに網羅的発現解析を行い原因遺伝子を明らかにする。 本年度は、QTL解析を実施するために開花に低温を要するDianthus capitatusと低温要求性のない「カーネアイノウ1号」のF1個体を自殖したF2種子を採種し、5系統のF1を自殖した後代643粒を得た。 開花促進に関与するFT遺伝子に関して、カーネーション「フランセスコ」のゲノム情報から8種類を特定し、相同性検索及び配列比較から、Dca19666.1のみが開花促進に重要なアミノ酸配列を保存していることを明らかにした。また、「フランセスコ」のDca19666.1の過剰発現シロイヌナズナは抽苔が促進されたことから、機能的なFT遺伝子であることを明らかにした。 開花抑制に関与するFLC遺伝子に関して、テーブルビートのBvFL1と高い相同性を示したDca45290.1およびその相同遺伝子であるDca42306.1についてカーネーション「フランセスコ」とD. capitatusのゲノム配列比較を行い、変異個所を明らかにした。また、「フランセスコ」のDca45290.1の過剰発現シロイヌナズナを作成し、抽苔が遅延する系統の存在を明らかにした。
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