青紫色を代表的な花色としてもち、花のアントシアニンについての情報が少ないAconitum属およびキキョウについて調査した。Aconitum属30系統についてアントシアニジン成分を分析した結果、青紫色花色29系統でデルフィニジンが大部分を占めていたものの、30系統全てから微量のシアニジンが検出され、11系統からこれまで報告がなかったペラルゴニジンが検出された。本結果から、シアニジン系やペラルゴニジン系アントシアニンを高濃度に蓄積させることで、青紫色以外の多彩な花色に発展させられる可能性が示唆された。また、アントシアニンの分析も行った。様々な花色のキキョウのアントシアニジン成分を分析し、これまでキキョウの花で報告のなかったシアニジンとペラルゴニジンを検出した。 本研究の目的は、アントシアニンによる青色発現についての情報を蓄積することで、より美しい青色花色品種育種を展開することを目指し、アントシアニンによる新規の青色花色発現条件を見出すとともに、より赤味のない純粋な青色花色発現機構の解明を行うことであった。材料として扱ったヒメツルニチニチソウとニゲラでは、それぞれの青色花と赤色花について、花弁(ガク片)の搾汁pHの測定、色素関連化合物のHPLCによる分析、さらに各成分を単離精製してMSやNMRなどの機器分析による構造決定を行い、比較した。一連の研究の中で、これらの花から新規のアントシアニン3種類を同定した。アントシアニンの青色化に関わりうる候補因子について、大量精製した色素関連化合物を用いたin vitroでの再現実験による証明を試みた。しかし、対象としたアントシアニンが、使用した緩衝液中で非常に不安定で、すぐに退色してしまう性質であったため、証明するデータを得るまでには至らなかった。実験方法について現在も検討中であり、今後の解明につなげたいと考えている。
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