研究課題/領域番号 |
17K07659
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
西島 隆明 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 主席研究員 (60355708)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 花卉育種 / 花器官形成 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、トレニアにおいて、花弁数が著しく多い花を着ける放射相称完全八重系統を、3つの変異、つまり、八重変異、多心皮変異、放射相称変異の集積によって育成する。さらに、この過程において花弁数の増加に重要な役割を果たす2つの現象、つまり、多心皮変異によって心皮が著しく増加する現象、ならびに、多心皮変異と八重変異を集積することにより、心皮数ではなく花弁数が著しく増加する現象について、その分子機構を解明することを目的とする。 令和元年度には、昨年度までに得られた放射相称完全八重個体を増殖し、形質の安定性および遺伝性を確認した。その結果、S1世代は全ての個体が安定して放射相称完全八重となることを確認した。完全八重系統では、花芽の向軸側(上側)における花弁の増加が背軸側(下側)に比較して大きかった。これに比較して、放射相称完全八重系統では、花芽の背軸側の花弁数の増加が向軸側と同程度になったことから、花弁数の増加に花芽の向背軸の制御が重要であることが示された。 昨年度までに、トランスポゾンディスプレイ解析によって多心皮変異の原因遺伝子候補と考えられたGRASファミリーの転写因子に関して解析を行った結果、多心皮変異に明瞭に関係することを示す発現パターンは得られず、また、完全長cDNAの塩基配列にも変異は認められなかった。また、多心皮変異および八重変異に関連した発現パターンが認められたTfKNUおよびTfCKX5では、完全長cDNAの塩基配列には変異は認められなかった。したがって、これらの遺伝子以外のの変異がTfKNUおよびTfCKX5の発現を二次的に制御していることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、変異の原因遺伝子をトランスポゾンディスプレイ法で同定することを計画していたが、分離集団を作成し直したにもかかわらず同定することができなかった。そのため、研究計画を、分裂組織関連遺伝子の解析と、次世代シーケンサーを用いた原因遺伝子の同定とを並行して進める内容に変更した。また、研究の途上で、八重化に伴う花弁数の増加に、花の向背軸の制御が重要であることが新たに明らかになり、その機構を解析するための研究計画を追加した。以上のような理由から、研究計画に遅れが生じた。次年度は、事業期間の延長を認めていただいたため、研究計画を完遂したい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究で、完全八重系統における花弁の増加が、花弁と雄蕊の間で起こることが分かっているが、令和2年度には、花弁の増加より前のステージの花芽を詳細に観察することにより、花弁と雄蕊の間で起こる花弁の増加が、花芽のどのような形態変化によって誘発されるのかを明らかにしたい。 また、昨年度までの研究で、放射相称八重系統の花弁数の増加に花芽の向背軸性の制御が重要な役割を果たしていることが明らかになったため、これまでに得られているいくつかの向背軸性の変異の原因遺伝子の同定、ならびに花弁数増加との関係の解析を行う。 一方、トランスポゾンディスプレイ解析によって原因遺伝子候補が検出されなかった多心皮系統ならびに八重系統については、TfKNUおよびTfCKX5の発現に影響すると考えられる系の遺伝子の発現解析を引き続き探索する。また、変異誘発因子であるTtf1がDNA型トランスポゾンであるため、原因遺伝子から既に切り出されてしまい、トランスポゾンディスプレイ解析によって検出されなかった可能性も考えられるため、正常型と変異型のF2分離集団を、次世代型シーケンサーを用いた染色体マッピング法で引き続き解析することにより、原因遺伝子の検出を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に、それまでの研究計画の遅れにより、高額な試薬と実験補助員の雇用を要する研究計画の一部を令和元年度に持ち越す計画となった。その影響で、令和2年度にも次年度使用額が生じた。令和2年度には、研究代表者が国立研究開発法人から大学に異動したため、当初の計画よりも物品費が多く必要になるとともに、研究補助員への人件費・謝金が不要になったことから、次年度使用額は、大部分を物品費に充てる計画である。
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