植物寄生性線虫の一種であるサツマイモネコブセンチュウは、世界の農業に甚大な被害を与えている。サツマイモネコブセンチュウは多食性であり、寄主は被子植物25万種に及ぶが、作物種や品種によって、感染力の差 (寄主適合性の違い) が見られる。この差を引き起こす原因を探ることによって、サツマイモネコブセンチュウの寄主範囲の広さの謎を解く鍵を得ることができる。 絶対寄生で単為生殖のサツマイモネコブセンチュウでは、系統の採集や維持に多大な労力を要し、また従来の交雑による遺伝学的解析が困難である。本研究では、48系統という多数のサツマイモネコブセンチュウ系統を用いることで、世界で報告のなかったゲノムワイド関連解析 (Genome-Wide Association Study; GWAS) に初めて成功した。その結果、寄主適合性に関わる「ホットスポット」ともいうべきゲノム領域を発見した。 研究実績は、以下の通りである。 (1) 日本各地の主にサツマイモ圃場から単離された、サツマイモネコブセンチュウ48系統のゲノムを解読した。(2) サツマイモ5品種に対する感染表現型 (SP レース) 検定を行い、32品種についてレース分類した。(3) SPレースとゲノム多型との関連を調べるため、系統のゲノム配列をマッピングし、SNP (一塩基多型) コールを行った。(4) 感染に関わるSNPが集積するゲノム領域を発見し、エフェクタータンパク質の候補を見出した。(5) さらに、海外系統とのゲノム比較を行い、世界の圃場から単離されたサツマイモネコブセンチュウ系統の多様性の低さを示した。
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