研究課題
陸稲品種の「戦捷」に由来するいもち病抵抗性遺伝子pi21は、イネの葉いもち病に菌系特異性が無く安定した抵抗性を付与する。pi21と相互作用する因子であるSnRK1をpi21を持つイネにおいて発現抑制(RNAi)すると、pi21に依存したいもち病抵抗性が著しく低下した。再現性を取るために、ゲノム編集個体を作成して解析を行うと、pi21の抵抗性が著しく落ちることはなかったが、SnRK1βは抵抗性が落ちる傾向にあった。このことは、RNAiによってSnRK1に類似するホモログが抵抗性に関与していることを示唆している。Promoter:GUSで組織特異性を調べると、いもち病菌の接種および無接種では、大きな変動は見られなかった。このことから、pi21とSnRK1βはタンパク質レベルでいもち病抵抗性の情報伝達が行われていると考えられる。抵抗性および罹病性イネ品種にいもち病菌を接種し、炭素および窒素のラジオアイソトープを取り込ませた実験では、炭素の流れには影響はなかった。一方、窒素では病斑の葉身基部側に窒素のシグナルが多く見られ、特に罹病性品種で大きなシグナルが観察された。この現象を確認するために、蛍光標識をしたいもち病菌を供試すると、抵抗性および罹病性品種ともに病斑から外部に伸びるシグナルが観察された。いもち病菌は、病斑部分だけではなく、病斑周辺領域へも菌糸を伸ばし、窒素を獲得していることが示唆された。そこで、SnRK1βの遺伝子については、酵母で糖および窒素の数種類の添加培地で、相互作用能に変化があるか調べたが大きな変動はなかった。さらに、pi21を大腸菌で、SnRK1βを小麦胚芽で発現させたタンパク質を用いて、相互作用の確認実験を行った。その結果、通常バッファーでの相互作用は確認できた。現在、様々な窒素源を添加した実験を行い、タンパク質間相互作用への影響を調べている。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)
Nature communications
巻: 11 ページ: 1-12
10.1038/s41467-020-1663
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 117 ページ: 21242-21250
10.1073/pnas.2005911117
Cell Host & Microbe
巻: 28 ページ: 825-837
10.1016/j.chom.2020.09.006
STAR protocols
巻: 1 ページ: 100226
10.1016/j.xpro.2020.100226
Plant Health Progress
巻: 21 ページ: 248-255
10.1094/PHP-05-20-0041-RS