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2017 年度 実施状況報告書

細胞レベルでの宿主病原菌相互作用機構解析による病害防除に向けた有用遺伝子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 17K07679
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

浅井 秀太  国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 客員研究員 (30723580)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード罹病性遺伝子 / 病害防除 / トランスクリプトーム
研究実績の概要

べと病は重要病害であり、古くから抵抗性遺伝子による抵抗性品種が利用されてきたが、新レースの出現と抵抗性打破のリスクを常に招いている。宿主植物と病原菌の関係においては、病原菌が標的とする、感染するために必要な宿主側の遺伝子(罹病性遺伝子)が存在し、罹病性遺伝子を欠損させた植物体には病原菌は感染することができない。罹病性遺伝子は、病原菌にとって宿主侵入前後における必須因子であることが予想されるため、その作物への応用は安定的で持続的な病害抵抗性に貢献することが期待される。本研究では、“細胞レベルでの宿主病原菌相互作用機構解析”および“免疫不全変異体を用いた順遺伝学的スクリーニング”を通して、べと病に対する新規の罹病性遺伝子を同定し、その機能解析を行うと同時に有用作物への応用を目指す。
■細胞レベルでの宿主病原菌相互作用機構解析
申請書にて示した手法を用いて、べと病菌が感染している細胞由来のmRNAsを濃縮することに成功し、トランスクリプトーム解析を行った。得られたべと病菌の推定標的遺伝子(罹病性遺伝子候補)のプロモーターにGUS を連結したコンストラクトを作製し、その形質転換シロイヌナズナを作製した。作製した形質転換体にベと病菌を接種し、べと病菌が感染している細胞で特異的に発現が誘導されることを確認した。
■免疫不全変異体を用いた順遺伝学的スクリーニング
これまでに、EMS処理により変異導入したM2 の免疫不全シロイヌナズナ変異体を用いて、べと病菌に対して抵抗性を示す変異体を選抜していた。今年度、得られた抵抗性変異体の戻し交配(免疫不全変異体とのクロス)を行い、F2 世代の表現型を基にしてゲノムシークエンスを行い、原因遺伝子(罹病性遺伝子候補)を同定した。
現在、上述の罹病性遺伝子候補の欠損および過剰発現シロイヌナズナを作製中であり、今後抵抗性の評価を行っていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究では、“細胞レベルでの宿主病原菌相互作用機構解析”および“免疫不全変異体を用いた順遺伝学的スクリーニング”を通して、べと病に対する新規の罹病性遺伝子を同定し、その機能解析を行うと同時に有用作物への応用を目指している。上述の通り、両方のアプローチにより罹病性遺伝子候補が見つかってきており、すでにそれらの欠損および過剰発現シロイヌナズナの作製に着手している。また、特異的な細胞におけるトランスクリプトーム解析については、手法をまとめた形で論文の執筆を始めている。

今後の研究の推進方策

(1) 得られた罹病性遺伝子候補の欠損および過剰発現シロイヌナズナを作製し、べと病菌に対する抵抗性の評価と共に、エリシターにより誘導される抵抗反応(活性酸素種生成、カロースの蓄積、防御関連遺伝子の発現など)の評価を行う。
(2) 過剰発現シロイヌナズナを用いた免疫沈降・質量分析法により、罹病性遺伝子候補産物の宿主(シロイヌナズナ)および病原菌(べと病菌)における相互作用因子を同定し、その欠損変異株や過剰発現株についても(1)と同様の解析を行っていく。
(3) 有用作物においてゲノム編集技術であるCRISPR 法を使用することで迅速に得られた罹病性遺伝子と相同性の高い遺伝子の変異体を作製し、作物における有用性の評価(べと病菌に対する抵抗性の評価)を行う。
(4) 実際の商品化を目指して、有用作物の変異体ラインからTILLING 法により罹病性遺伝子の欠損変異株を選抜し、べと病菌に対する抵抗性の評価を行う。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] センズベリー研究所(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      センズベリー研究所
  • [国際共同研究] マックスプランク研究所(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      マックスプランク研究所
  • [国際共同研究] ミネソタ大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ミネソタ大学
  • [雑誌論文] The highly buffered Arabidopsis immune signaling network conceals the functions of its components2017

    • 著者名/発表者名
      1)Hillmer R.A., Tsuda K., Rallapalli G., Asai S., Truman W., Papke M.D., Sakakibara H., Jones J.D.G., Myers C.L. and Katagiri F.
    • 雑誌名

      PLoS Genetics

      巻: 13(5) ページ: e1006639

    • DOI

      https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1006639

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Albugo-imposed changes to tryptophanderived antimicrobial metabolite biosynthesis may contribute to suppression of non-host resistance to Phytophthora infestans in Arabidopsis thaliana2017

    • 著者名/発表者名
      2)Prince D.C., Rallapalli G., Xu D., Schoonbeek H.-J., Cevik V., Asai S., Kemen E., Cruz-Mireles N., Kemen A., Belhaj K., Schornack S., Kamoun S., Holub E.B., Halkier B.A. and Jones J.D.G.
    • 雑誌名

      BMC Biology

      巻: 15:20 ページ: 1-22

    • DOI

      DOI 10.1186/s12915-017-0360-z

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 細胞レベルでの宿主病原菌相互作用機構解析による病害防除に向けた有用遺伝子の探索2018

    • 著者名/発表者名
      浅井秀太
    • 学会等名
      平成30年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] 細胞レベルでの宿主病原菌相互作用機構の解析2017

    • 著者名/発表者名
      浅井秀太
    • 学会等名
      第3回農学中手の会
  • [学会発表] 罹病性遺伝子の同定に向けたdde2/ein2/pad4/sid2の復帰突然変異体のスクリーニング2017

    • 著者名/発表者名
      浅井秀太
    • 学会等名
      平成29年度日本植物病理学会関東部会
  • [学会発表] 病原ゲノミクスによる土壌診断法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      浅井秀太
    • 学会等名
      平成29年度植物感染生理談話会
  • [学会発表] Subtilisin-like proteaseは植物病原細菌に対する抵抗性を正に制御する2017

    • 著者名/発表者名
      浅井秀太
    • 学会等名
      平成29年度日本植物病理学会大会
  • [備考] 理化学研究所植物免疫研究グループ

    • URL

      http://plantimmunity.riken.jp/index_ja.html

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-22  

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