研究課題/領域番号 |
17K07686
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
安居 拓恵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 上級研究員 (80414952)
|
研究分担者 |
安田 哲也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, グループ長 (20414625)
辻井 直 (藤原直) 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 主任研究員 (40568440)
鈴木 敏夫 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80202133)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 揮発性フェロモン / コンタクトフェロモン / 触角応答 / ゴマダラクトン |
研究実績の概要 |
カミキリムシは果樹などの各種永年作物の幹の内部を食害し枯死させるため、農業上大変重要であるにもかかわらず防除が難しいものが多い。カミキリムシの行動を解明し、様々な手法を組み合わせることで、行動制御を行うことを目的としている。ゴマダラカミキリはカンキツ類など世界的重要害虫であるが,その効率的な防除法はないに等しい。これまでにオスを誘引する物質は見つけていたがメスを誘引することができていなかった。昨年,近縁種においてオスが放出し,オス・メス両方を誘引する揮発性フェロモンが報告されたため、本種でも調べたところ、オスが近縁種と同じ物質を放出しており、その物質に対してオスメス成虫ともに触角が応答することが明らかとなった。さらに新たに既報にはない雌雄成虫両方から揮発する物質で、触角が応答する物質も見つけ出した。 また,オスはメス体表上の接触性のコンタクトフェロモンを認識することによってそこに定着する。必須成分であるゴマダラクトン群は3-オキサビシクロ[3.3.0]オクタン骨格を有する複雑な化学構造であるため合成が困難であった。平成30年度は,この特異的なフェロモン物質のゴマダラクトンA、B、Cおよびそのジアステレオマーの全合成に成功し、ゴマダラカミキリオス成虫に提示して交尾行動を指標としたアッセイを行った。合成物が天然のゴマダラクトン類に匹敵する活性をもつことが明らかとなり、複数成分にまたがるコンタクトフェロモン成分の全容が解明できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
揮発性フェロモン候補物質については本種も近縁種と同じ物質を放出していることが明らかとなり、さらに新規に既報ではない成虫の揮発性物質に対しても触角が反応することが明らかとなった。また、コンタクトフェロモンについては当初の予定通り、合成類縁体を複数合成しているが、平成30年度はこれまで困難であったゴマダラクトンAおよびBの全合成に成功したので、合成物が天然のゴマダラクトン類に匹敵する活性をもつことが明らかとなり、複数成分にまたがるコンタクトフェロモン成分の全容が解明できたことは予想を上回る成果であった。
|
今後の研究の推進方策 |
近縁種と同じ2種の揮発性フェロモン候補物質と新たにもう1種の物質の触角反応は確認できたので、今後は生きた本種成虫を用いた行動アッセイを行い、活性を確認する。また、コンタクトフェロモンについては当初の予定通り多くのゴマダラクトン類縁体を合成し、オスに提示するアッセイを行って、構造と活性に関するデータを蓄積して活性発現の基本的構造を明らかにする。さらに、本種の性質を利用した総合防除法についてもたとえば昆虫病原糸状菌等を含めて利用する方法を試す予定である。ここで得た知見は遅れている害虫カミキリムシ類の行動制御へ応用できることも期待され,近年大問題となっている侵入害虫クビアカツヤカミキリの制御法の開発に資する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
試薬類が計画より安価に購入できたため。 次年度使用額はカミキリムシ採集旅費、実験およびカミキリムシ飼育維持にかかる試薬や消耗品等の購入に充てる。
|