研究課題/領域番号 |
17K07688
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
田村 泰盛 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, ユニット長 (90370668)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 耐虫性品種 |
研究実績の概要 |
1.抵抗性遺伝子の同定 昨年度、ツマグロヨコバイ抵抗性の候補遺伝子を2つに絞り込み、抵抗性系統を用いてそれぞれの遺伝子をCRISPR-Cas9システムでノックアウトした形質転換体(T0)を作成し、後代種子(T1)を採種した。本年度は導入した変異がホモに固定され、かつCas9遺伝子を含まない系統をT1種子から選抜し、この系統の後代種子(T2)を用いてツマグロヨコバイ抵抗性の検定を行った。 その結果、2つの候補遺伝子のうちの1つで、フレームシフト変異の導入により抵抗性が消失することが確かめられた。この遺伝子は、異なる2か所にフレームシフト変異を導入した場合でも同様に抵抗性が消失したため、この遺伝子が抵抗性遺伝子であると考えられた。この抵抗性遺伝子は、現在までに機能未知とされてきた遺伝子で、植物の害虫抵抗性遺伝子として同定された例はまだなかった。この遺伝子と配列類似性の高い遺伝子は、イネ科だけでなく、植物に広く分布している可能性が示唆された。 2.抵抗性発現機構の解析 幾つかの植物では、害虫に対する誘導抵抗性にジャスモン酸等の植物ホルモンが関与するシグナル伝達経路が寄与していることが知られている。ツマグロヨコバイ抵抗性遺伝子が関与する抵抗性の発現にジャスモン酸経路が関与しているかを調査するために、ジャスモン酸合成に関わる遺伝子をノックアウトするためのコンストラクトを作成した。すなわち、遺伝子上に変異を導入するターゲット配列を決定し、ターゲット配列を「Cas9, guide RNA一体型バイナリーベクター」に導入したコンストラクトを作成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度で、ツマグロヨコバイ抵抗性遺伝子を特定した。この遺伝子は今まで機能未知とされてきた遺伝子であり、植物の害虫抵抗性遺伝子として報告された例はまだなかった。この新規抵抗性遺伝子と配列類似性の高い遺伝子は、イネ科だけでなく、植物に広く分布している可能性が示唆された。よって、計画は順調に進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度で抵抗性遺伝子の同定に成功した。今後はこの抵抗性遺伝子が関与する抵抗性のメカニズムの研究を進める。 まず、抵抗性イネの葉鞘にツマグロヨコバイを付け、吸汁行動を電気的に測定する装置で、ツマグロヨコバイの吸汁行動を解析する。次に、口針が篩部まで到達し、そこから篩管液が吸汁できないことを示す波形が観察された際に、イネ葉鞘の加害部位を採取して固定する。感受性系統では、篩管吸汁が成立した加害部位のサンプルを採取する。口針が挿入された篩管で、篩管閉塞が起きていないかを光学顕微鏡・透過型電子顕微鏡等を用いて観察する。 また、抵抗性の発現に、植物ホルモンが関与するシグナル伝達系が関係しているかを調査するための形質転換体作出する。さらに、抵抗性遺伝子の発現機構の解析に着手する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2年目の透過電顕のサンプル作成を行う実験を3年目に集中的に取り組むために、2年目の予算の一部を3年目に繰り越した。3年目は予算を繰り越したことにより、透過電顕のサンプル作成の技術を持った研究補助員を短期で雇用する予算が確保できた。
|