現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温ストレス耐性及び,越冬後の生長再開に関与する新規機能性ペプチドを同定するために,平成29年度は,マイクロアレイによるペプチドをコードする遺伝子(sORF)の発現解析を行った.サンプルには,2週間生育したシロイヌナズナの未処理(NA, 22℃),低温馴化(CA)処理(2℃,1,7日),脱馴化(DA)処理(低温馴化処理後に22℃,6,24時間)したものを使用し,マイクロアレイはペプチドをコードするsORFを含むカスタムマイクロアレイを使用した.マイクロアレイの結果,28 の新規sORFがNAと比較して,CA1d, CA7d, DA6h, DA24hのいずれかの処理で4倍以上に発現が上昇すること明らかとなった.このうち18個はCA1dで,13個はCA7dで,3個はDA6h, 24hでそれぞれ発現が高くなっており(CA1d, CA7dの間で重複する遺伝子があった),CAで発現が高くなった遺伝子は低温ストレス耐性に,DAで発現が高くなった遺伝子は越冬後の生長再開に関与するものの候補として,今後の解析を進めることとした. さらに,CA1d, CA7dにおいて発現の高かったsORFのペプチドを2つずつ選抜し,ペプチドを人工合成した.それらの添加試験の結果,CA7dで発現の高かったペプチドを処理した植物では,NA条件でCOR15A, RD29A, KIN2などの低温誘導性遺伝子の発現が抑えられており,CA7dで誘導されるペプチドが低温ストレス応答のシグナル伝達に何らかの機能を有する可能性が示された.今後はこれらのペプチドの添加試験により,低温ストレス耐性に対する機能を明らかにする予定である.
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