本研究では、葉緑体の窒素同化の制御因子であるACR11の制御機構の解明を目的として、研究を行ってきた。先行研究から、ACR11がGS/GOGATの制御を行うことは明らかになっている。一方で、申請者のこれまでの実験結果から、ACR11がGS/GOGATの制御だけに機能していると考えると、単純には説明できない表現型が認められてきた。現時点では、ACR11欠損株で合成されたグルタミン酸のフローが、野生株と異なる可能性を考えている。
今年度は、それを検証するため、1)安定同位体を用いたトレーサー実験、および、2)葉緑体アミノ酸輸送体とACR11欠損変異株の二重変異株の解析を目的として研究を進めた。まず、安定同位体を用いたトレーサー実験の予備実験として、土壌、寒天培地、水耕培地で野生株とACR11欠損変異株を栽培し、遊離アミノ酸分析を行ったところ、いずれの条件においても(野生株とACR11欠損変異株において)同じ傾向の差が認められた。水耕栽培の方が土壌栽培や寒天培地栽培と比較して、安定同位体の取り込みが確実であったことから、トレーサー実験を水耕栽培で進めることとした。現時点で水耕栽培を用いて安定な植物の生育が可能になっており、この系を用いてトレーサー実験を進める予定である。次に、昨年度までの結果を踏まえ、ACR11欠損株に特有のアミノ酸遊離プロファイルの一因は、葉緑体から葉緑体外へのアミノ酸輸送活性が(野生株と)異なる点にあるのではないかと考え、ACR11欠損株との二重変異株を作成を行った。現在は、二重変異株の選抜を終え、今後、その表現型の解析を進めていく予定である。
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