研究課題/領域番号 |
17K07694
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅野 均志 東北大学, 農学研究科, 准教授 (30250731)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 水田土壌の硫黄肥沃度 / 可給態硫黄 / 可溶性金属 |
研究実績の概要 |
本研究は,水稲の硫黄欠乏対策に不可欠な「水田土壌の硫黄肥沃度評価法」の開発を目標とし,土壌の可給態硫黄の実態評価,土壌診断による硫黄肥沃度評価法(還元の進行と難溶性金属硫化物の生成を考慮する)の確立,土壌理化学性に基づいた水田土壌における硫黄肥沃度ダイナミクスの制御機構を明らかにすることを目的とする。 研究実施計画では,3年間で供試土壌を可能な限り増やして水稲の硫黄欠乏の実態(潜在的なものも含む)を把握する予定としているが,2年目の本年は水稲の硫黄欠乏が報告されている広島県世羅町の4箇所および秋田県北部の2箇所から採取した水田土壌を新たに供試土壌に加え,ポット栽培試験を実施して水稲の石膏施与への応答を確認した。得られた結果は,土壌に含まれる可給態硫黄および難溶性硫化物を形成する可溶性亜鉛や銅の存在により水稲の石膏施与への応答を説明可能であるという仮説を強く支持するものであった。さらに今年度は,亜鉛ばかりでなく銅の人工的添加によってもポット栽培試験で水稲の硫黄欠乏が誘発されることを初めて確認し,難溶性硫化物の形成が水田土壌における硫黄肥沃度に関与するメカニズムの一端を実証することができた。以上の結果は,水田土壌における硫黄肥沃度ダイナミクスを明らかにする研究目標達成への大きな前進であると確信している。 また,1年目に検討に着手した水田土壌の硫黄肥沃度の広域評価について,2年目は実際に岩手県(n=257)と広島県(n=60)の農地の可給態硫黄を測定し,硫黄欠乏の発生が懸念される水田土壌がマイナーではない点を明らかにすることができた。さらに,両県が保管している過去の定点調査試料と現在の試料との比較により,農地の可給態硫黄レベルが長期的に減少している可能性を指摘し,水田の可給態硫黄の実態評価を深化させることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに供試土壌のバリエーションを増やしたポット栽培試験を実施することができた。さらに岩手県と広島県の協力により,可給態硫黄の広域評価や定点調査試料の再利用による可給態硫黄レベルの長期的変化の検討に着手することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
前年までと同様に,水田土壌の硫黄肥沃度が異なると思われる地点の情報収集を広く行い,疑いのある圃場で土壌試料を採取して持ち帰り,ポット栽培試験を実施して水稲の石膏施与への応答を引き続き検討する。 さらに,これまでに得られた試料群を対象として可溶性金属の形態分析を行い,栽培試験結果との対比により難溶性硫化物の形成に関わる土壌中の亜鉛や銅の画分を検討し,それらをもとに水田土壌における硫黄肥沃度ダイナミクスの制御機構の解明と実用的硫黄肥沃度評価法の完成を目指す。 また,最終年ではあるが,今後のために可給態硫黄の広域調査等を関係者の協力を得ながら可能な限り拡充しておきたい。
|