水稲の硫黄(S)欠乏に関わる土壌要因を明らかにする目的で,水田土壌のS肥沃度ダイナミクスとその制御機構を検討した。3年間を通じて実施した17供試土壌を用いたポット栽培試験およびそれ以前の試験結果により,土壌の可給態Sの多寡および土壌還元に伴う難溶性硫化物(不溶性S)形成の量的関係により水稲のS欠乏を説明する作業仮説が強く支持されたことから,溶解度の異なる金属硫化物形成が水田土壌のS供給力を制御するモデルを提案した。また,岩手県および広島県を対象とした水田土壌のS肥沃度広域評価の結果は,S不足による水稲の生育抑制が特殊ではないことおよび土壌診断に基づく対策が必要であることを示唆するものであった。
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