研究課題/領域番号 |
17K07695
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
西澤 智康 茨城大学, 農学部, 准教授 (40722111)
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研究分担者 |
佐藤 嘉則 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 室長 (50466645)
太田 寛行 茨城大学, 農学部, 教授 (80168947)
成澤 才彦 茨城大学, 農学部, 教授 (90431650)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 土壌微生物 / 微生物間相互作用 / 内生細菌 / 細菌ゲノム解読 / 比較ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
土壌糸状菌Mortierella elongata分離株の菌糸細胞にBetaproteobacteriaに属する細菌Mycoavidus cysteinexigensが内生していた。糸状菌-内生細菌の共生関係、特に共生微生物間の相互作用を明らかにするため、分離・培養したM. cysteinexigens B1-EB株の全ゲノムを解読(2.79M bp)した。さらに、分離培養が可能な病原性菌類Rhizopus microsporus に内生するBurkholderia rhizoxinica (HKI454株)とアメリカの森林土壌から分離されたMortierella属菌の内生細菌AG77(未分離)の各々のゲノム配列との比較ゲノム解析により、M. cysteinexigens株におけるゲノム改変の可能性が示唆された。ゲノム改変を起こす遺伝子領域は,プロファージ領域の脱落が推察され、トランスポゾンの減少と伴に糖類・アミノ酸の代謝に関わる遺伝子や二次代謝産物の合成系遺伝子群の脱落、細胞内侵入に関与するタイプIII型分泌機構の不完全な遺伝子群を見出した。また、宿主細胞の生育に関与するトキシン/アンチトキシン(TA)システム系の殺虫毒素合成遺伝子がB1-EB株で見出された。 細胞内再共生の技術開発のため、糸状菌M. elongataの内生細菌非保有株を作製して、内生細菌保有糸状菌の生理化学的な性状と有機物分解特性を明らかにした。内生細菌を保有する糸状菌は、プロリンなどのいくつかのアミノ酸やグリセロールの代謝活性を高めていることが示唆された。 さらに、これまでに確立した手法を用いて、糸状菌M. parvispora株からB1-EB株と系統的に異なる内生細菌Mycoavidus株の分離に成功し、その全ゲノム解読を行い、生理生態的に特徴付けるための遺伝子同定解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、実験室内系において内生細菌保有糸状菌と非保有糸状菌の生理生態的特徴の差を明らかにすることができた。また、糸状菌Mortierellaにおける分離培養可能な細菌Mycoavidusの細胞内共生をモデルとして,比較ゲノム解析からM. cysteinexigens B1-EB株のゲノム改変の特徴を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
新規に分離したMycoavidus株とB1-EB株との比較ゲノム解析により、共生系システムの解明に向けて研究を進める。また、2つの内生細菌Mycoavidus分離株を用いて、異なる宿主糸状菌との交雑実験が可能となり、内生細菌非保有の糸状菌Mortierellaへの再内生化条件の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、遺伝子解析委託への経費を少なく見積もったため不足した。補うために人件費・謝金分を利用した。次年度のその他の項目もしくは人件費・謝金の予算に加算する予定である。
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