研究課題/領域番号 |
17K07697
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
佐々木 孝行 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (60362985)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リンゴ酸輸送体 / トマト / ALMTファミリー / アルミニウム / 電気生理学 / 果実 / 孔辺細胞 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、果実モデル植物トマトにおいて器官特異的に発現する、リンゴ酸・陰イオン輸送体をコードするSlALMTファミリー遺伝子の生理機能の多様性を明らかにする。 昨年度までに、果実熟成の初期段階で発現するSlALMTについて、プロモーターGUS形質転換トマトを用いることで、果実の維管束で発現すること、および電気生理学的測定により、果実で発現する他の2つよりも高いアニオン輸送活性を示す事を明らかとした。本年度はさらに、アフリカツメガエル卵母細胞の電気生理学的解析により、リンゴ酸以外にも他のジカルボン酸および硝酸・塩素イオンを輸送するが、クエン酸や酸性アミノ酸は透過しない等の輸送基質の詳細を解明した。さらに、果実と種子の有機酸含量の調査のため、このSlALMT遺伝子の発現抑制体を作製し、メタボローム解析を行った。 一方で昨年までに、トマトのSlALMT遺伝子の一つが気孔を構成する孔辺細胞で発現することを、RT-PCRおよびプロモーターGFP形質転換トマトの解析により明らかにした。本年度、アフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理学的解析を行った。その結果、卵母細胞の外液をリンゴ酸にした際に、陰イオン:特にリンゴ酸の高い放出活性が見られるなど、シロイヌナズナのAtALMT12と共通する輸送特性が明らかとなった。このことから、このトマトSlALMTが気孔閉口に関与することが強く示唆された。さらに、遺伝子発現抑制トマト形質転換体の作出を行い、本年度は数系統の候補株を得ることができた。次年度にはhomozygous系統を得て、この遺伝子産物の気孔運動に関する生理機能を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に引き続き、トマトの果実熟成初期に発現するSlALMT輸送体と、気孔の孔辺細胞のSlALMT輸送体の解析を進めた。特に、アフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理学的解析により、果実のSlALMTについての新たな輸送基質の特性を明らかにした。また、果実にのSlALMT輸送体については発現抑制体を作出し、果実の代謝産物を解析中である。 さらに孔辺細胞のSlALMTについても、電気生理学的解析により輸送特性の詳細が明らかとなった。また、形質転換トマトの作出もおおむね順調に進んでいる。 これら2つのALMT遺伝子について概ね予定通りに解析を進めてきた。
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今後の研究の推進方策 |
果実初期に発現するSlALMTについて、発現制御した形質転換体と野生株の果実熟成過程における代謝産物の変動を解析中である。これにより、代謝産物と成熟過程におけるSlALMTの生理機能を明らかにする。 さらに、孔辺細胞で発現するSlALMTについて、発現抑制体を作出し、気孔開口度の測定や孔辺細胞の電気生理的解析を行い、気孔開度への生理的な関与を明らかにする。 昨年度は、根で発現誘導されるALMTについても解析を進めていたが、遺伝子の発現状況やリンゴ酸輸送機能が明確となった果実と気孔の2つのSlALMT遺伝子を優先して研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
果実で発現するSlALMT遺伝子については、遺伝子発現抑制の形質転換トマトのhomozygous系統を得ることができ、代謝産物の解析を進めており、次年度も継続して解析を行う。また、過剰発現体の解析も行う必要がある。さらに、孔辺細胞発現のSlALMTについても遺伝子発現抑制形質転換トマトのhomozygous系統を作出中である。次年度、当該予算を用いてこれら形質転換体の詳細な解析を進める。
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