土壌の微生物間に働く相互作用は微生物の増殖や活性に影響を及ぼしており、この相互作用は土壌管理などの異なる環境条件によって変化する可能性がある。したがって、この土壌微生物間の相互作用(ネットワーク)を理解し、そのネットワークの状況を的確に判断できれば土壌の生物性の評価につながることが期待される。そこで、土壌微生物由来の揮発性有機化合物(VOCs)のメタボローム解析により土壌の生物性を評価するための手法について研究を進めている。本研究では、植物および根の周囲(根圏)土壌の微生物の産生するVOCsを攪乱することなく同時に分析し、また土壌に施用した有機資材の影響や土壌微生物群集構造との関連についても調査した。 植物および微生物由来VOCsを同時に測定するため、大容量ヘッドスペース(LVSH)法を用いた。これは、試料を専用のガラス容器に入れ、その大容量のヘッドスペースガスを超低温で凍結濃縮することでGC-MSへ導入する方法であり、試料そのままの状態の微量なVOCsを測定することが可能である。植物をポットで栽培し、ポットごとそのままLVSH専用容器に移した。その一定時間後の容器中に存在するVOCs成分をLVSH法によるGC-MSにて分析した。ヘッドスペースガスの注入方法にはPulsed Vacuum Extraction 100ml×5回を用い、高い再現性でより多くのVOCs成分を検出することが可能となった。栽培条件の異なるトマト幼植物のVOCsプロファイルを解析した結果、根圏の土壌微生物由来VOCsおよび植物由来VOCsを同時に検出できることが分かった。また、この時のサンプルの根圏細菌群集構造をDGGE法にて解析し、VOCsとの関連について検討した。
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