研究課題/領域番号 |
17K07700
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
渡邊 眞紀子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10175119)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 土壌菌核粒子 / 重金属 / 放射性炭素年代 / 土壌環境 |
研究実績の概要 |
鉱山や火力発電所などを給源とする大気経由で拡散した重金属は森林によってトラップされ、リター分解を経て森林土壌に蓄積される。樹木と共生する菌(カビ)がつくる、黒色で球状の耐久構造体である菌核Sclerotiaは、目視により森林土壌から検出することが可能であり、その内部は強い酸性条件下で対生物毒性をもつアルミニウムが多く含まれ、重金属も10~100ppmオーダーで取り込まれている。本研究では、国内外の森林土壌を対象に土壌菌核粒子に含まれる重金属濃度と粒子の形成年代を求めることにより、菌核に記録された環境情報を取得する。また、国内外の森林土壌から検出される土壌菌核粒子中の重金属のバックグランド・データの取得をめざす。 29年度は、モンゴル国ウランバートル市郊外の森林ステップ地域で調査を行い、セノコッカム属様の菌核粒子を現場で目視確認することができた。国内では、銅鉱山地域周辺の森林土壌表層からセノコッカム属菌核(粒径0.5mm以上)を約60ミリグラム採取することができた。モンゴル国立大学化学教室のB.オユンツェツェク教授(分析化学)と共同で土壌菌核粒子中の重金属濃度の定量法を確立した。30年度は、B.オユンツェツェク教授のグループによりモンゴルの森林ステップ地域の土壌菌核粒子が採取され、土壌と土壌菌核中の主要元素と微量元素の定量分析を進めた。国内では福島県南会津郡の森林土壌ほかで調査と土壌菌核粒子の採取を行った。国内の森林土壌表層から採取された菌核粒子の14C年代値はModern~130yrPBという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(平成29年度)では、菌核粒子中の元素定量分析は、ICP-OESとICP-MSを統合して行うこと、土壌の重金属含量をXRFを用いることを決定し、分析に必要な菌核試料量が求まった。これに基づいて、2年目(30年度)にモンゴルおよび国内で調査を実施し、菌核中の主要元素・微量元素の定量分析とその分散分析を行ったほか、土壌元素組成、土壌pH、 ECなどの土壌性状データが得られた。とくに、モンゴルで採取されたセノコッカム様菌核は、アルカリ性森林土壌で形成されたものであるため、低pH森林土壌から検出される国内の土壌菌核粒子との環境特性を比較する上で興味深い結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
31年度は、モンゴル国立大学ボロルマ・オユンツェツェク教授とウランバートル郊外の森林ステップの採取地域を広げて共同調査を実施する。土壌と土壌菌核粒子の元素分析、土壌性状の分析を進め、データのとりまとめを行い、土壌から菌核粒子への主要元素(Al,Caなど)と微量元素(As,Pb,Cu,Znなど)それぞれの移行係数と環境要因の関係性の考察する。また、土壌菌核中の重金属濃度のバックグランド値を算定する。
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