研究実績の概要 |
樹木と共生する外生菌根菌(セノコッカム属など)が形成するメラニン質の休眠態粒子(菌核)は、目視により森林土壌から検出することが可能である。本研究では、国内外の森林土壌から検出されるメラニン質菌核に含まれる重金属の濃度とその形成年代を求め、森林土壌から検出される土壌菌核中の重金属のバックグランド・データの取得、菌核内部への金属濃縮機構に関する知見を得ることを目的とする。 本研究では、新潟県妙高山埋没腐植層中の菌核を標準試料として、モンゴル国立大学のB・オユンツェツェク教授(分析化学)と共同で菌核の重金属濃度の定量法を検討し、ICP-OESとICP-MSを併用した方法で行うことを決定した。土壌の重金属含量については、XRFを用いて、土壌から菌核への元素の移行係数の定義づけを行った。ウランバートル郊外の森林ステップ土壌のほか、福島県、秋田県のブナ林で試料採取を実施したほか、研究代表者がこれまで採取した試料を用いて、重金属濃度の定量、SEM-EDSによる菌核内部の観察・分析、加速器14C年代測定による菌核の年代値を得た。その結果、土壌pH4~8の幅広い領域の森林から採取された菌核の元素組成の特徴を明らかにすることができた。土壌から菌核への主要元素(Al,Ca)および微量元素(As,Pbほか)の移行係数とこれを支配する環境要因が明らかとなった。低pH領域では、土壌から菌核への金属元素移行係数のバックグランド値に関して信頼性の高いデータが得られた。また、放射性炭素年代測定によって得られた菌核の土壌残留期間の推定値から、菌核内部の金属元素の濃縮機構を考察した。なお、本研究を進めるにあたり、モンゴル国内における調査、環境試料採取および試料移送に関する許可をモンゴル政府機関より得てABS手続きを完了している。本研究の成果公表は、国際会議発表(4件)と国際誌投稿(1編,現在査読中)による。
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