研究実績の概要 |
本研究はイネのカドミウム吸収を司る遺伝子であるNramp5に注目し、その相同性遺伝子をコムギとダイズで特定するとともに、Nramp5が他の作物においてもカドミウム吸収において重要な遺伝子であるかどうかを明らかにすることを目的とする。 研究初年度に、ダイズとコムギからNramp5をクローニングした。イネのOsNramp5とのアミノ酸配列に関する相同性はダイズのGmNramp5で69%、A, B, Dゲノム上にあるコムギのNramp5で80%以上と高い相同性があることがわかった。イネのプロトプラストを用いて各Nramp5の局在性を観察したところ、すべて細胞膜上に局在することがわかった。 二年目に各Nramp5のカドミウムとマンガンの輸送活性を組換え酵母を利用して評価した。その結果、ダイズのGmNramp5はカドミウムとマンガンに対して高い輸送活性を示すが、コムギのTdNramp5やTaNramp5のホモログはいずれもカドミウムとマンガンに対して輸送活性が低いか、ほとんど輸送しないことが示唆された。 最終年度はOsNramp5とTaNramp5Aのキメラタンパク質を作り、カドミウムとマンガンの輸送活性に関わる領域の特定を行った。OsNramp5のC末端側の膜貫通領域を順次TaNramp5Aと交換したキメラタンパク質を複数作製し、カドミウム感受性の酵母株Δycf1とマンガン吸収欠損酵母株のΔsmf1を用いて各元素の輸送活性を調査した。その結果、OsNramp5のN末端側にカドミウムとマンガンに対して高い輸送活性を示す領域があることがわかった。
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