| 研究課題/領域番号 |
17K07704
|
|---|
| 研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
|---|
研究代表者 |
岡崎 圭毅 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 主任研究員 (40414750)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
| キーワード | ダイズ / メタボロミクス / GC/MS / 土壌水分 / 乾燥 / 湿害 |
|---|
| 研究実績の概要 |
気候変動下でも安定した作物生産を維持するため、干ばつや過湿条件に対して頑強性を示す作物が求められている。これまでの研究で、土壌の乾－湿条件および根域の縮小により、ダイズにおいて代謝産物の蓄積量が大きく変動することを見出し、この鋭敏な代謝応答は、ダイズの生産性や窒素集積機構にも関与することが予想された。本研究では、代謝産物の応答を中心に解析することにより、生理的な視点から生産性の決定に関わる新たな要因を明らかにすることを目的とする。
30年度は、乾燥条件に対応して蓄積量が変化する代謝産物について、これまでの4回分のポット試験結果をもとに、機械学習により、イノシトール類の2成分が安定的に水分条件に応じた変動を示すことを明らかにした。さらに、圃場試験や現地試験試料においても、この2成分が土壌の乾燥ストレスと対応することを見出すとともに、開花期から収穫期までの変動パターンを明らかにした。以上により、葉身に含まれるイノシトール類が乾燥ストレスの指標として利用できる可能性が示された。一方、ポット試験における通気性と乾燥処理の複合効果については明瞭な傾向が認められなかった。
湿害の影響については、ポット試験により過湿処理の2週間後も代謝産物プロファイルに影響が残ること、湿害に加えて乾燥条件にした際に葉身の斑点が増加するなど、地上部に変化が生じることを見出した。さらに、湿害の判別に利用できる代謝産物の候補を明らかにした。湿害処理後は糖類の蓄積パターンが異なったことを受け、葉身試料を対象としたRNA-seq解析を実施し、データ解析を進めている。次年度はRNA-seq解析等の結果を踏まえて、湿害暴露後における生理的な特徴および生産性との関連を明らかにする。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乾燥条件に特徴的な代謝産物について、4回のポット試験および圃場試験において共通した変動を示すこと、および生育期間中の推移を明らかにした。過湿条件における代謝産物の特徴を明らかにし、過湿と乾燥の組み合わせにより地上部の特徴および代謝産物に異なる傾向が生じることが示された。過湿環境の影響の詳細についてRNA-seq解析を進めている。以上により、土壌乾燥および過湿環境の特徴付けに有効な指標を水溶性成分および揮発性成分に見出すなど、概ね順調に進捗している。
|
| 今後の研究の推進方策 |
農業生産上重要とされている湿害後の乾燥害が生産性の低下に与える影響について、メカニズム解明に結びつく形態的、生理的特徴を捉えることが出来たことから、今後湿害後の生理的変化についてさらなる解析を進めていく。代謝産物解析において特徴が見出された糖代謝および老化応答に関連する生理的特徴などを中心に研究を進める。RNA-seq解析等の結果を踏まえつつ、生産性等に寄与する生理的要因の詳細を明らかにする。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
RNA-seq解析の依頼分析費用について、分析試料再調整のため、支払いが次年度になったことと、消耗品類が予定よりも安価で購入できたことにより残額が生じたため、次年度使用額が生じた。当該助成金は次年度に実施予定である湿害等のストレス発生後の生理的状態の解析において、詳細な生理的特徴を明らかにするための試薬・器具類の購入にあてる予定。
|
