研究課題/領域番号 |
17K07705
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
木羽 隆敏 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (20532097)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 窒素栄養 / 窒素欠乏 / 窒素恒常性 / 窒素不足 / 転写因子 / 転写制御 / NIGT1 |
研究実績の概要 |
絶えず変動する窒素栄養環境において、植物がその生命活動を安定的に維持するためには、外環境と体内の窒素栄養状態に応じて個体の窒素栄養恒常性を保つことが極めて重要である。しかし植物がどのように窒素栄養恒常性の乱れを感知・応答・正常化するのかについて、その分子メカニズムの理解は進んでいない。 本研究では、①GARP型転写因子群AtNIGT1sを介した窒素恒常性維持の分子メカニズム解明と②窒素恒常性を支える窒素情報伝達ネットワーク解明の二つの観点から研究を進める計画である。本年度は①の研究に重点をおき、AtNIGT1sの機能解析を中心に行った。atnigt1変異体とAtNIGT1過剰発現体は窒素恒常性を正常に維持できず、atnigt1多重変異体では窒素栄養状態に関わらず窒素含量が高い(低炭素/窒素)のに対し、AtNIGT1 過剰発現体では窒素含量が低い(高炭素/窒素)ことに注目した。この変化が、どの組織の、どの画分の窒素含量の変化に起因するのかを詳しく調べた結果、根でも葉でも、硝酸態の窒素の増減で説明できることを明らかにした。全タンパク質、クロロフィル、全アミノ酸含量に違いは検出されなかった。硝酸態の窒素の増減は、AtNIGT1sによる硝酸イオン輸送体遺伝子の制御によることも明らかにした。これらの結果をまとめ、GARP型転写因子群AtNIGT1sによる窒素欠乏応答制御(恒常性維持)メカニズムとして論文発表した。最近アクセプトされたので、平成30年度には出版される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文の改訂のために追加実験等が必要だったため、研究の進捗はやや遅れている。しかし、今後の研究の推進には問題ない程度である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究には①AtNIGT1sを介した窒素恒常性維持の分子メカニズム解明と②窒素恒常性を支える窒素情報伝達ネットワーク解明の二つの柱がある。①はすでに論文発表して完了済みである。今後は②の研究を以下のステップで推進する。 1.これまでに報告されている窒素のセンシング、情報伝達、情報統御、転写などに関わる因子の変異体や過剰発現体を入手または作製する。 2.これらの変異体や過剰発現体において、窒素栄養恒常性異常が見られるかを調べる。窒素栄養条件、組織、画分別に窒素含量を調べる。 3.異常が見られた変異体について、それらの原因因子の分子機能を考慮した上で、多重変異体や形質転換体等を作製することにより遺伝学的相互作用を検証する。またAtNIGT1sを介した系との相互作用も調べる。 4.情報を集約し、窒素栄養恒常性維持に関わる情報伝達系とそれらのネットワークを明らかにするために必要な実験を適宜行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
窒素・炭素含量測定と同位体定量を年度内に行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度には予定通り測定を行う計画である。
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