研究実績の概要 |
これまでに、Bacillus circulans KA-304由来α-1,3-グルカナーゼAgl-KAは、アルカリ反応条件下で転移活性を示すことを明らかにし、また、Agl-KA触媒ドメイン(Agl-KAΔDCD-UCD)の結晶構造を解析した。本年度は、結晶構造解析による反応機構の解明と、Agl-KAと真菌型α-1,3-グルカナーゼを用いた反応比較、を行うために以下の2項目について検討した。 1. Agl-KAΔDCD-UCDとニゲロースのドッキングシミュレーションを行った結果、酵素の変異解析から明らかになった触媒必須アミノ酸である1067、1090、1091番目のアスパラギン酸が位置する部位にニゲロースが結合すると予測された。加水分解と転移反応の反応機構の解明を目指し、基質と酵素の共結晶体の構造解析を試みたが、得られた結晶中には基質が存在していなかった。そこで、触媒ドメインの1067番目アスパラギン酸をアラニンに置換した変異体D1067Aを用いて結晶化条件を検討し、単結晶を得た。 2. Agl-KAと比較するため、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe由来α-1,3-グルカナーゼAgn1-spのクローニングとPichia pastorisでの異種発現を試みた。発現用プラスミドpPICZαB-Agn1spをエレクトロポレーション法にて、P. pastorisに導入した。得られた形質転換体の培養液を濃縮することで得た粗酵素標品を用いて、酢酸緩衝液(pH 5)中で不溶性α-1-3-グルカンの加水分解反応を行ったところ、ニゲロペンタオースとニゲロヘキサオースが生成した。NaOHで可溶化したα-1,3-グルカンを用いてpH 8で反応を行ったところ、得られた生成物はニゲロペンタオースとニゲロヘキサオースであり、より長鎖のオリゴ糖は得られなかった。
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