水稲栽培土壌における窒素固定活性の向上を目的に、高C/Nの竹粉に着目し炭素源として竹粉、窒素源として牛糞堆肥を土壌に供給することで、土壌細菌による窒素固定が促進されるか否かを検討した。大学圃場にて化学肥料あるいは牛糞堆肥を肥料に用い、それぞれに竹粉を施用する区画としない区画の合計4区画を設定し灌水前、水稲栽培期、稲刈り後の計3回について各区画から土壌の採取を行った。土壌のニトロゲナーゼ活性の測定を行ったところ、2018年度の試験と同様に活性は、いずれの区画でも灌水前は低く、水稲栽培期に最も高くなり、稲刈り後には再び低下した。水稲栽培期と稲刈り後に採取した土壌では、化学肥料と比較して牛糞堆肥を施用した土壌において高い活性が認められた。竹粉施用は水稲栽培期では活性に促進的には働かなかったが、稲刈り後では牛糞堆肥を施用した土壌で竹粉による活性の増加傾向が認められた。稲刈り後土壌での竹粉による活性促進は、2018年度の試験と同様の結果となった。土壌からDNAを抽出し16S rRNA遺伝子を標的としたアンプリコンシークエンスを行い土壌細菌叢の変化を解析した。2年間での季節変動を繰り返し調べたところ、化学肥料と牛糞堆肥の両施肥区共に灌水前から水稲栽培期にかけての季節変動が最も大きく細菌叢に影響を及ぼした。一方、水稲栽培期から稲刈り後の顕著な変化は認められなかった。また、サンプリングを行った全ての季節において、化学肥料と牛糞堆肥の違いも菌叢に影響を及ぼした。竹粉施用の有無で比較した場合、化学肥料の施用区では菌叢に顕著な変化は認められなかった一方、牛糞堆肥の施用区では化学肥料と牛糞堆肥の違いほど顕著ではないが菌叢の変化が認められた。また、土壌サンプルから窒素固定によるジアゾ栄養増殖に優れたMicrobacterium sp.を単離し、好気条件下におけるニトロゲナーゼ活性を確認した。
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