研究課題/領域番号 |
17K07710
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 良一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (50323481)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Saccharomyces cerevisiae / Yarrowia lipolytica / リン脂質 / 輸送 / 脂質輸送タンパク質 / Sec14ファミリータンパク質 / 膜コンタクトサイト |
研究実績の概要 |
① Saccharomyces cerevisiaeにおけるリン脂質の輸送機構の解析:ミトコンドリアのPE合成酵素遺伝子PSD1の破壊株においてSFH1を破壊すると生育が悪化することが示され、SFH1とホスファチジルエタノールアミン(PE)との関わりが示唆された。また、SFH1の高発現によるPSD1破壊株の乳酸培地での生育欠損の抑圧に、ミトコンドリアと小胞体のコンタクトサイト形成に関わるERMES複合体が重要であることが示され、ERMES複合体がPEの輸送に関わる可能性が示唆された。 ② Yarrowia lipolyticaにおけるリン脂質の輸送機構の解析:Y. lipolyticaのSec14ファミリータンパク質遺伝子SFH2オルソログであるSFH21の破壊株の菌糸生長の欠損がSFH22および新たに見出したSFH24の高発現により抑圧することが示され、SFH22およびSFH24がSFH21と重複する機能を持つことが示唆された。これらの結果から、Y. lipolyticaにおいてSfh2オルソログがn-アルカン培地での菌糸成長に関わることが示唆された。 ③ S. cerevisiaeにおける生体膜ロバストネスの解析:PEをホスファチジルコリン(PC)に変換する酢酸菌由来のPEメチル化酵素pmtをPC合成に関わるPEM1、PEM2の二重破壊株の細胞膜に局在させた場合、コリン非存在下でも生育が可能になったことからpmtが酵母細胞膜でPEメチル化酵素として機能していることが示唆された。またpmtを細胞膜に局在させた株では細胞膜のPE含量が低下する可能性が示唆された。更にこの株において、リン脂質輸送に関わる可能性のある遺伝子群を破壊すると生育が悪化することが示された。これらの結果から、この系がS. cerevisiaeにおける生体膜ロバストネスの解析に有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
S. cerevisiaeにおいてSfh1の機能を明らかにしたこと、膜コンタクトサイトのリン脂質輸送における役割を明らかにしたこと、S. cerevisiaeにおいて生体膜ロバストネスを解析する系を構築できたこと、Y. lipolyticaのSfh2オルソログの機能の解析を進めたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
① Saccharomyces cerevisiaeにおけるリン脂質の輸送機構の解析:SEC14およびSFH1-SFH5の6種のSec14ファミリータンパク質遺伝子を全て破壊した遺伝的背景で各タンパク質を単独で発現する株を作製し、表現型を観察することにより、それらの機能を解析する。pmtを細胞膜に局在させた株において、高発現させた場合に生育を回復させる遺伝子を探索することにより、リン脂質輸送に関わる遺伝子を単離し、その機能を解析する。 ② Yarrowia lipolyticaにおけるリン脂質の輸送機構の解析:SFH24破壊株および、SFH21、SFH22、SFH23、SFH24四重破壊株の細胞内のリン脂質分布を解析する。さらにSfh21タンパク質のリン脂質輸送能を解析する。また膜コンタクトサイト関連タンパク質遺伝子の破壊株を作製し、その表現型を解析する。 ③ S. cerevisiaeにおける生体膜ロバストネスの解析:pmtを細胞膜に局在させた株において様々なストレス下での生育の解析や各脂質の合成酵素の発現量と活性の解析を行うことにより、細胞膜でPEをPCに変換することによる影響を調べる。 ④ Y. lipolyticaの生体膜ロバストネスの改変による脂質生産の効率化:Y. lipolyticaにおいて生体膜ロバストネスに関わる遺伝子の破壊株、変異株、高発現株等を作製し、n-アルカンからのジカルボン酸生産を解析し、生体膜ロバストネスの改変による脂質生産への効果を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、当初の予定より物品費および旅費が少なかったため、494,294円を次年度に使用する。 次年度は、試薬類、酵素類、使い捨てプラスチック器具、標識化合物、ガラス器具、合成DNAの購入のための物品比として1,394,294円を、国内外の学会参加のための旅費として300,000円を、塩基配列解析にかかる費用および論文投稿にかかる費用として100,000円を使用する計画である。
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