① Saccharomyces cerevisiaeにおけるリン脂質の輸送機構の解析:SEC14温度感受性株でSFH1~SFH5を全て破壊した株において、各SEC14ファミリー遺伝子を発現させ生育を観察した。その結果、SEC14を発現させた場合に生育が回復したが、それ以外ではSFH2とSFH3を発現させた株で生育が部分的に回復していたことから、SFH2とSFH3がSEC14と一部重複した機能を有する可能性が示唆された。また、Sec14ファミリータンパク質が細胞内でリン脂質輸送を行う可能性を検証した。PE合成に関わるホスファチジルセリン脱炭酸酵素遺伝子PSD1およびPSD2の二重破壊株は、ミトコンドリアのPE量が低下して呼吸能に欠損を示し、乳酸を資化できない。この株で各SFH遺伝子を高発現させたところ、エタノールアミンを添加した乳酸培地ではSFH2~SFH5の高発現により生育の回復がみられ、またSFH1の高発現でも生育の部分的な回復が見られた。これらの結果から、Sfh1~Sfh5がミトコンドリアのPE量の維持に関わる可能性が考えられた。 ② Yarrowia lipolyticaにおけるリン脂質の輸送機構の解析:SFH24の単独破壊株とSFH21~24をすべて破壊した4重破壊株を作製して解析した。SFH24破壊株は生育の欠損は示さず、4重破壊株はSFH21~23の3重破壊株と同様の生育を示した。 ③ S. cerevisiaeにおける生体膜ロバストネスの解析:ER-PMコンタクトサイト形成に関わる遺伝子の6重破壊株を作製し、PEメチル化酵素pmtを細胞膜に局在させたところ、生育の欠損は見られなかったことから、細胞膜へのPEの供給にこれらの遺伝子は重要な役割を果たしていない可能性が考えられた。
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