研究課題/領域番号 |
17K07712
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
舘川 宏之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60251576)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生体膜 / リン脂質 / 出芽酵母 / 胞子形成 / 細胞分化 / 脱リン酸化酵素 |
研究実績の概要 |
前胞子膜の伸長に必須なPP1複合体及びSSV複合体について、その役割を調べるため、前年度から引き続き、以下の研究を行った。 1 PP1複合体(Gip1-Glc7)のターゲットを明らかにするため、まず、前胞子膜形成時にリン酸化されているタンパク質を解析する系を立ち上げた。胞子形成時のタンパク質を抽出し、プロテアーゼ処理、リン酸化ペプチドのカラム精製、MS解析により、リン酸化されるタンパク質とリン酸化部位を同定した。これにより、胞子形成に関係する多くのタンパク質のリン酸化部位を同定することに成功した。中でも、Gip1自体、Gip1結合タンパク質であるYsw1のリン酸化部位も明らかにすることができ、その意義について解析中である。またそれ以外にも、前胞子膜の先端に局在化するLeading Edge Complexのコンポーネントのリン酸化を示すことができ、PP1複合体との関係が期待された。 2 SSV複合体については、通常の蛍光顕微鏡を用いた解析に加えて超解像顕微鏡を用いた解析も行い、小胞体-細胞膜コンタクトサイトを形成するタンパク質が胞子形成時にいて前胞子膜に局在することを確認するとともに、SSV複合体の欠損によりその局在に影響があることを明らかにすることができた。この結果は、SSV複合体が他のコンタクトサイトタンパク質と協調的にはたらいていることを示唆している。現在、リン脂質関連のデータと合わせて論文を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね研究は順調に進んでいる。PP1複合体のについては、リン酸化部位を同定する系が確立できたので、それを用いてターゲットを明らかにする段階にきており、結果が期待される。SSV複合体に関しては、現在までの結果を論文にまとめるとともに、さらなる解析を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた結果をもとに、研究を進める。PP1複合体のターゲットについては、リン酸化部位を同定する系が確立できたので、野生株とgip1破壊株のそれぞれ前胞子膜形成時の細胞抽出液より、リン酸化ペプチドを精製して、その違いをMS解析により調べることが可能になった。この実験により、ターゲット候補を見つけ出し、リン酸化部位への変異の導入により、その重要性を明らかにする。また、相互作用タンパク質でありYsw1との関係にも一層迫りたい。 SSV複合体については、論文をまとめるとともに、小胞体-細胞膜コンタクトサイトを形成するタンパク質の多重欠損株の作製により、その胞子形成における役割を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
リン酸化ペプチドの解析の系を立ち上げるのに多少時間がかかり、まだ現在解析が進行中である。そのための予算を次年度にする予定である。
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