バイオフィルムは、細菌、藻類、カビ類などの微生物が、糖類、ペプチド、DNAやRNAなどの核酸などと共に、生物あるいは非生物の表面などに密集して存在している構造体である。最近では、バイオフィルムの構造体内部(しかし細胞の外)に、多量の細胞外DNAが存在していることが明らかにされ、それが遺伝子水平伝播の原材料になっている可能性が指摘されている。バイオフィルム内部は浮遊状態と比較して、高密度に微生物細胞が密集した状態であるので、遺伝子の水平伝播を起こすために大変有利な場所であると考えれる。本研究では、バイオフィルムに存在するとされる細胞外DNA、細胞内DNAを大規模配列解読し、これまで不明とされてきた細胞外DNAの由来生物と遺伝子構成について解析した。 つくば市の池の底からバイオフィルム試料をn=3で採取し、その試料を2つに分割した。その後、片方のみをDNaseで処理した。合計6試料からDNAを採取し、得られたDNA試料をHiseqによるシーケンシングに供した。得られたシーケンシング結果は、MetaWRAPのパイプラインと同様に進めた。 アセンブルとBinningの結果、メタゲノムをBinにまで処理することができた。さらに解析を進めた所、DNase処理の有無で、abundanceが統計上有意に異なるBinがいくつか見つかった。それとは独立にBinningに依存しない遺伝子組成の変化について調べた所、DNaseの処理の有無で、統計上有意に異なる種の存在が明らかになった。これらがeDNAであると推測された。
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