研究課題/領域番号 |
17K07716
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山本 博規 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (20262701)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞壁テイコ酸 / リポテイコ酸 / 細胞壁 / 枯草菌 / タンパク質局在性 |
研究実績の概要 |
細胞壁テイコ酸(WTA)輸送体であるTagGHタンパク質にFLAG-tagを融合させ、免疫蛍光顕微鏡観察を行った結果、細胞側壁にパッチ状に局在することを明らかにした。また、TagHタンパク質の膜貫通領域および細胞外ドメインを欠損させた場合、37℃では生育に全く影響を及ぼさないが、50℃以上では生育が停止することを見出した。この生育への影響は、膜貫通領域を残して細胞外ドメインのみを欠損させた場合には見られなかった。このことから、TagHの膜貫通領域は高温でのテイコ酸輸送に必須であることが明らかになった。 さらにWTA合成に関与するTagO/A/B/D/Fタンパク質に関しても、FLAG融合タンパク質の局在性を観察した結果、全てのタンパク質が細胞側壁にパッチ状に局在していることが明らかとなった。この結果は、過去にGFP融合タンパク質で報告されている「らせん状の局在パターン」とは異なっていた。またMreBを枯渇させた細胞では、WTA修飾量が約30%ほど低下する原因を調べるために、MreB枯渇細胞におけるTagO/A/B/D/F/H/T/U/Vの局在性を観察した。しかしながら、これら全てのタンパク質の局在性に顕著な変化は見られなかった。 次に、WTAリガーゼであるTagT/U/Vに2種類のepitope-tag(FLAGおよびc-Myc)を融合させて共局在するかどうか観察した結果、ごく一部のタンパク質しか共局在していなかった。このことは3種類のWTAリガーゼ間でも、役割分担が存在する可能性が示唆された。同様にLTA合成酵素(LtaSおよびYfnI)に関しても共局在性を調べた結果、約半数のタンパク質が共局在していたものの、残りのスポットは単独で局在していたことから、栄養増殖期のLTA合成酵素に関しても、ある程度の割合で役割分担がある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
WTA輸送体のコンポーネントの一つであるTagHタンパク質は、既に報告されているGFP融合タンパク質で観察されたらせん状の局在性ではなく、細胞側壁にパッチ状に局在することを明らかにした。またTagGH輸送体が高温環境において機能するためには、TagHタンパク質の膜貫通領域が非常に重要な役割を担っていることを明らかにした。これらの研究成果に関しては、現在論文として投稿中である。 さらに、これまでFLAG-tagのみがepitope-tagとして唯一利用できていたが、新たにc-Myc-tagも利用可能であることを見出した。これによりFLAG-tagとc-Myc-tagを用いて2種類のタンパク質を標識し、免疫蛍光顕微鏡により観察することが可能となった。実際にWTAリガーゼであるTagT/U/Vや、LTA合成酵素であるLtaS/YfnIについて、それぞれの局在性を同一細胞において観察することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って、同一細胞におけるWTAおよびLTA修飾部位の位置関係をより詳細に観察する。また、高温条件下においてWTAおよびLTA修飾量が低下する原因を明らかにするために、高温環境における両ポリマー合成酵素群の局在性や局在量の変化を調べる。さらに高温環境下での生育におけるLTAポリマーの重要性を明らかにするために、LTA欠損株を生育限界温度で培養した際に、LTA合成酵素(LtaSおよびYfnI)の局在性や局在量に変化が見られるかどうか明らかにする。またLTA欠損株を高温で培養した際に、他の膜タンパク質(MgtE, RodA, PbpA/H, TagH等)の局在性に影響を及ぼすかどうか調査する。
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